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共謀罪法案の衆議院強行採決に抗議する声明

本年3月21日、安倍政権は「テロ等準備罪」法案すなわち共謀罪法案を提出し、自民・公明・維新は、5月19日、衆議院法務委員会における審議を打ち切って同法案の強行採決をし、さらに同月23日には、衆議院本会議において強行採決をした。

衆議院法務委員会における共謀罪法案の審議は、大臣が答弁を求められているにもかかわらず政府職員が勝手に答弁をしたり、また、「一般市民は捜査の対象にもならない」などとする一方で「捜査の対象になる者はそもそも一般市民ではない」などとしたり、「テロ対策」に借口し、テロ対策を目的としない国連越境組織犯罪防止条約(TOC条約)を持ち出して「TOC条約を締結するために、この法律を制定する必要がある」とする等、極めて不誠実な答弁が繰り返された。この度の強行採決は、民主主義を愚弄した上でなされたものであり、当協会は、これに強く抗議するものである。

政府は、一般市民は処罰の対象にならないかのように強弁し続けるが、そもそも、同法案には一般市民を対象としないなどという文言はなく、国家権力が、「組織的犯罪集団」の「犯罪」の「計画」すなわち共謀と、「準備行為」があると判断しさえすれば、条文解釈上、誰でもが処罰対象となり得る規定となっている。

当協会が従前から指摘してきたとおり、およそ何らかの行為があれば「準備行為」とされうるし、「『共謀』をした」とされた者のうち一人でも「準備行為」をすれば処罰できるとするのであるから、結局、「共謀」すなわち「意思」を処罰するものであり、憲法で保障された内心の自由の侵害となる。また、捜査当局の捜査方法は、電話、FAX、電子メール、会話等の盗聴や、盗撮、潜入活動(スパイ活動)等に頼ることとなる。しかも、共謀罪法案の対象とされる犯罪は約300と多数かつ広範囲にわたるのであるから、国家権力は、弾圧のターゲットに選んだ者について、極めて容易に、対象犯罪を「『共謀』し、『準備行為』をした」として捜査・取締・処罰できるようになる。

共謀罪法案は、組織的犯罪処罰法を改正する形をとっているが、同法には、組織的威力業務妨害罪、組織的強要罪、組織的信用毀損罪がある。これらは、もともと構成要件があいまいで、労働運動などの市民運動・社会運動を弾圧することに利用されてきた。したがって、共謀罪法案が成立すると、昨年改悪された盗聴法等と相まって、労働組合、市民団体、NGO、政党などの活動に対する監視が著しく強化され、簡単に捜査・取締・処罰対象とされて、その活動は萎縮させられ、圧殺されることとなる。

安倍政権により憲法違反の安保関連法(戦争法)が国民の強い反対にもかかわらず強行成立させられ、戦闘状態にある南スーダンPKOに自衛隊が派遣されるなど、今日、我が国が海外で武力行使を行う危険が高まっている。戦前の治安維持法が侵略戦争に反対する国民を弾圧した歴史に照らせば、共謀罪法案は、我が国の海外での武力行使に反対する意見を抑圧し、「戦争する国づくり」を推進することをも狙ったものと言わざるを得ない。

平和・民主主義・国民の権利を守り発展させることを目的とする当協会は、国家権力による恣意的で不公正な捜査・取締・処罰が行われる危険性が高く、労働運動をはじめとする市民運動・社会運動を抑圧し、戦争する国づくりにつながる共謀罪法案について、衆議院における強行採決に抗議し、強く廃案を求めるものである。

2017年5月26日
民 主 法 律 協 会
会長 萬井 隆令

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