羽衣国際大学事件 女性講師を支援する会を結成

2020年10月15日

弁護士 西川 翔大

1 はじめに

2020年9月 日(金)18時半から、社会福祉会館で、zoomと併用して「羽衣国際大学(女性講師)を支援する会」結成総会が開催されました。会場には、羽衣国際大学教職員組合、関西私大教連、堺労連、弁護団、羽衣国際大学卒業生(女性講師の教え子)などが集いました。

2 事案の概要

本件は、羽衣国際大学で有期雇用契約により非常勤講師、専任講師として、通算すると約9年間勤務した女性講師が、労働契約法18条1項に基づき無期転換権を行使しようとしたのに対して、大学側は大学教員等の任期に関する法律(以下「大学教員任期法」といいます。)第7条の適用により無期転換権の発生する期間が「5年」ではなく「10年」であると主張して、その行使を認めず、女性講師に対して2019年3月31日をもって雇止めを強行した事件です。

女性講師は、2019年5月31日に学校法人羽衣学園に対して無期雇用契約を前提とした労働契約上の地位確認等を求めて大阪地裁に提訴しました。

3 訴訟の経過

提訴後に大きく報道された新聞記事を見て、理事長が女性講師には「気持ちよく戻ってもらう」と発言したため、女性講師の早期職場復帰を目指して、羽衣国際大学教職員組合と大学側の団体交渉を継続し、和解による解決が模索され、裁判所においても、計7回に及ぶ進行協議の中で和解の可能性が検討されました。しかし、大学側は無期雇用を受け入れることはできないと回答し、現時点で和解は困難と判断され、訴訟を進行しています。

4 大学教員任期法7条の適用がないこと

本件の主な争点は、女性講師に対して大学教員等任期法7条の適用があるのかという点です。

大学教員等任期法7条とは、大学等で先端的・総合的な研究や計画的な教育研究などを対象にして、多様な知識や経験を有する教員相互の学問的交流が行われる状況を創出することを目的に、労働契約法 条1項の特例として無期転換権の通算期間を5年ではなく10年とするものです。

大学側は任期を定めて雇用した女性講師について当然にこの法律の適用があるものと主張しています。

しかし、常に雇用の不安にさらされる有期雇用労働者にとって無期転換権は非常に重要な権限であり、無期転換権の通算期間を10年に延長する大学教員任期法7条の適用によって大学教員の身分保障は不安定なものになります。そのため、立法趣旨においても、任期制の適用が恣意的にならないように、任期制適用にかかる手続(学長の意見聴取手続、公表、本人に対する説明等)を経ることを前提とした限定的な適用が想定されています。

少なくとも大学側がこれらの手続を経たことは不明瞭であり、任期を定めた女性講師について当然に大学教員等任期法7条の適用があると主張する大学側の主張は認められません。女性講師には原則どおり労働契約法18条1項に基づき5年間での無期転換権行使が認められるべきです。

5 最後に

2013(平成 )年4月1日に労働契約法改正により無期転換権が導入されたことは有期雇用労働者にとって重要な意義を有しており、大学教員であってもそれは変わりません。大学教員の身分保障を蔑ろにする大学教員任期法は時代に逆行するものであり、関西圏の他の大学でも教員に対して当然に適用する事例が複数見られます。全国的に大学教員任期法の適用に関して正面から判断した事案はなく、今回判決までいけば全国でも大きな影響を与えることになります。今後も、結成した女性講師を支援する会を中心に、弁護団ともども女性講師の早期職場復帰を目指して取り組みたいと考えていますので、ご支援いただきますようよろしくお願いいたします。

(弁護団は鎌田幸夫、中西基、西川翔大)