日本郵政20条裁判―― 154人が集団提訴!

2020年04月15日

弁護士 河村  学

1 日本郵政2次提訴

日本郵政で期間雇用社員として就労していた労働者154人が、2020年2月14日(一部は2月18日)、全国一斉に集団提訴した。提訴裁判所と原告数の内訳は、札幌(6人)、東京(57人)、大阪(57人)、広島(11人)、高知(7人)、福岡(8人)、神戸(8人)、長崎(4人)となっている。弁護団は総勢43人、損害賠償請求の総額は約2億5000万円で、「非正規」労働をめぐる訴訟としてはかつてない規模である。

請求の内容は、期間雇用社員の労働条件が、無期雇用社員の労働条件と比べ不合理な相違があり、労働契約法20条に違反するとして、相違する差額に相当する損害賠償等を求めるものである。請求対象にしている労働条件は、①住居手当、②年末年始勤務手当、③夏期・冬期休暇、④年始の祝日給、⑤有給の病気休暇、⑥扶養手当、⑦夏期・年末一時金、⑧寒冷地手当である。

2 第1次訴訟は最高裁に

この提訴を主導した郵政ユニオンは、既に、2014年に東京と大阪で労働契約法20条違反を理由とする裁判を提訴しており、東日本事件では、地裁判決(東京地判H ・9・14労判1164号5頁)、高裁判決(東京高判H30・12・13労判1198号4 5頁)が出され、西日本事件でも、地裁判決(大阪地判H30・2・21労判1180号26頁)、高裁判決(大阪高判H31・1・24労判1197号5頁)が出されている。また、別途、佐賀でも同種の裁判が起こされ、地裁判決(佐賀地判H29・6・30労経速2323号30頁)、高裁判決(福岡高判H30・5・24労経速2352号3頁)が出されている。これら3つの事件はすべて最高裁に係属しており、かつ、それぞれの判断内容も結論も異なることから、最高裁において一定の判断が出される可能性が高い。

特に、東日本事件東京高裁判決と西日本事件大阪高裁判決は、労契法20条に関する最高裁の初判断(ハマキョウレックス事件(最二小判平30・6・1労判1179号20頁)、長沢運輸事件(最二小判平30・6・1労判1179号34頁)以降の高裁判決であり、アルバイトに賞与を支給しないことを一部不合理とした大阪医科薬科大学事件大阪高裁判決(H31・2・15労判1199号5頁)、契約社員に退職金を支給しないことを一部不合理としたメトロコマース東京高裁判決(H31・2・20労判1198号5頁)とともに(いずれも最高裁に係属中)、今後の解釈の流れに影響を与える重要裁判例である。

3 本提訴の意義

今回、集団提訴は、この解釈の流れに大きなインパクトを与えるものである。有期雇用労働者など「非正規」とされてきた労働者のみならず、「正規」とされてきた労働者も含めて、不合理な待遇差はおかしいという声を大きくすることが、いまほど重要なときはない。政府でさえ同一労働同一賃金を口にせざるを得ず、裁判所も一定の解釈を確立しようとしている最中だからである。

また、労働者同士の間にも根強く存在する差別意識・競争意識を押さえるためにも意味がある。世間的に根強く存在する有期雇用労働者は多少差別されててもいいとか、有期雇用労働者は「そういうもの」という感覚は、労働者を分断し、使用者に対する対抗力を弱めるため最大限に利用されてきたのであり、この取り組みは、こうした感覚を払拭し、連帯した運動を構築する足がかりになる。

さらに、日本郵政は、第一次訴訟での判決後、無期雇用社員の労働条件を引き下げる措置をとるなどし、また、相違の是正を求める郵政ユニオンの要求をことごとく退けるなど不当な対応をとり続けている。今回の集団提訴は、日本郵政を追い詰め、そこで働く有期雇用労働者全体の労働条件の引き上げを現実に勝ち取るたたかいでもある。