関西外国語大学 懲戒処分無効確認請求事件

2020年04月15日

弁護士 岸本 由起子
(原審代理人 戸谷茂樹 岸本由起子 片山直弥)

 令和2年1月29日、大阪地方裁判所第5民事部(裁判長裁判官中山誠一、裁判官大寄悦加、裁判官溝口達)は、原告らの請求をいずれも棄却するという判決を言い渡しました。

原告らは、控訴し、現在は、大阪高等裁判所13民事部C3係に係属しています。
第1回口頭弁論期日は令和2年6月11日午前10時に指定されています。

本件の争点は多岐にわたるのですが、字数の制限があるので、ストライキに関する事項に限って、報告しようと思います。
本件のストライキの特徴は、①開始当初は、ストライキと明言せず、団体行動権の行使としていたこと、②使用者側からストライキでないのであれば、懲戒処分するとの警告があり、その後、組合はストライキであると通告したこと、③平成23年4月から開始され、本件懲戒処分は平成29年1月付けであること(ストライキは長期間に及ぶこと)、④2コマを不担当とするストライキであること、⑤2つ目の委員会担当を不担当とするストライキもあること、⑥時間管理がされていない大学教員によるストライキであること、⑦長期間にわたるストライキの参加者は入れ替わりがあること、⑧賃金カットがされており、それは、「増担手当」だけではなく、賃金全体について割合を掛けて控除されたこと、⑨学園が懲戒処分前にストライキの有効性に疑義があるとして、警告していたことがあります。

原判決は、争議行為の正当性に関する判断枠組みとして、「争議権の保障は、労務不提供などの業務の正常な運営を阻害する行為であっても、かかる行為の刑事責任及び民事責任を特別に免責し、あるいはかかる行為を理由とする不利益取り扱いを特別に禁止することによって、団体交渉における労働者の立場を強化し、あるいは団体交渉における交渉の行き詰まりを打開するなど、団体交渉を機能させる趣旨のものと解される。」としました。いわゆる「機能説」に立つことを明らかにしました。

そして、「団体交渉は、労使が対等な立場で、合意により、労働条件の決定を始めとする労使間のルールを形成する機能を有していることに鑑みると、争議行為は、団体交渉を通じた労使間の合意形成を促進する目的あるいは態様で行われなければならないものと解される。」「争議行為の態様が、団体交渉において業務命令によって命じられた義務が不存在であることの確認(6コマまたは8コマを超えるコマ数の担当や複数の委員会担当を命じる業務命令に従う義務はないということの確認)を団体交渉の協議事項としつつ、争議行為として当該義務の履行そのものを拒否する場合、当該争議行為は、当該義務の不存在確認に関する団体交渉を促進する手段としての性質を有することは否定できないものの、他方で、当該義務の不存在確認という目的自体は、争議行為によって、団体交渉を経ずして達成されることになるから、当該争議行為は、労使間の合意形成を促進するという目的を離れ、労働組合による使用者の人事権行使となる側面がある。そのため、上記態様の争議行為の実施状況に照らし、当該争議行為が、業務命令の拒否自体を目的としているとみることができるなど、団体交渉を通じた労使間の合意形成を促進する目的が失われたものと評価できる場合には、当該時点から正当性を有しないものというべきである。」としました。

本件では、労使間の担当コマ数や委員会数をめぐる紛争に関する団体交渉は、これ以上の進展がない状態に至っていたから、本件の指名ストは、実現しない団体交渉事項として、団交目的を喪失したとして、正当性を否定しました。学園は誠実交渉を尽くしたとし、これ以上の進展は見込めないので、ストライキは違法としたのです。

学園が誠実交渉を尽くしたというのは、事実誤認です。裁判所は、学園が開示していなかった文書を開示したとして、明らかな事実誤認をしています。また、組合は、教員の労働時間実態調査を求め、また、理事長や学長が団体交渉に出席するよう求めていましたが、学園が応じることはありませんでした。

そして、そもそも、誠実交渉であったとしても、労働組合として、ストライキを打って、より高い合意をめざすことは、違法ではないはずであり、団体交渉が進展する状況にないからという理由をもって、当初は正当性が認められていたストライキが、その正当性を喪失するに至るというのは理解しがたいのです。

本件ストライキは労働条件向上を実現しようとしたものであることは争いのない事実であり、目的において正当であることは明らかです。また、その態様は、業務阻害性が低く、学園の運営にほとんど影響しないものであったからこそ、長期間続けても、学園から譲歩を引き出せなかったのです。

控訴審では、代理人として、豊川義明弁護士、牛尾淳志弁護士に加わっていただきました。
また、ストライキ権について、研究者に鑑定意見書の作成依頼を検討します。
引き続き、皆様のご支援をお願いいたします。