民主法律時報

自治体で働く非正規労働者の実態を 社会的にアピール――なくそう! 官製ワーキングプア第7回大阪集会

吹田市関連職員労働組合 丹羽 博子

2019年10月14日、19号台風が吹き荒れ、開催も危ぶまれたところでしたが、 約150名の参加で盛況でした。
会計年度任用制度実施を半年後に控えて、各自治体が法改正の趣旨を活かした条例制定ができるのか、ギリギリの時点での開催です。

[分科会]

第1分科会〈入門講座〉

31 名参加、山下弘之氏(官製ワーキング研究会)の基礎編の講義。初めての参加の方には難しいの声もありましたが、法改正に至る経緯から法的位置づけ、問題点など明快な切り口で話されました。
第2分科会〈条例化への取り組み交流〉
37 名参加、できるだけたくさんの人に発言を求めました。非正規労働者の処遇改善が実現するはずが、労働基本権のはく奪、賃金の低下、1年ごとの新たな任用、5年あるいは3年毎の公募、新たな任用の厳しい欠格条項・人事評価・民間委託など、問題点が満載であることが共有できた場でした。参加者全員これからもやったるぞ!と意気込みました。
第3分科会〈公共サービスと公共労働〉
30 名の参加、大阪では非正規比率は4割を超え、改めて公共サービスの担い手の継続性・専門性が問題になっている。学童保育への営利企業参入が増え、委託時の解雇、企業の団交拒否、指導内容の継承、劣悪な労働環境による人手不足などの実態が明らかにされました。参加者も公営・民間・受託者など多彩で、諸問題の関連が見えた。今後も深めるべき課題が満載でした。

[全体会]

・闘いの現場から~一人だって黙ってられへん ~

労働契約法20条裁判で、「アルバイトに賞与を認める」初の司法判断(大阪高裁)をもぎ取った、大阪医科大学勤務Mさんのインタビューで始まりました、「私、裁判がこんなに大変って知らなかったんです。でも絶対おかしいって思って・・」と。また、ブラック職場でたった一人本の出版という形で反撃した県立K考古学研究所の非正規労働者高岡さやさんとのミニ対談と続きました。

・各地の会計年度任用職員制度条例化の攻防~まだまだ あきらめてへんよ ~

○京都市ユニオンらくだの組合の存亡をかけた、「ILO申し立て」をしました。○吹田市関連労組では、正職員の賃金の時間按分まで勝ち取ってきた非常勤職員の報酬が、維新政治の横やりで頭打ちになり条例化でも回復が図れませんでした。○大阪教育合同労組では、団体交渉拒否の大阪府の不当労働行為を労働委員会に申し立てました。○大阪市家庭児童相談員労組では、年収レベルでの現給保障は勝ち取ったものの、3年ごとの公募はつぶしきれていません。○京都市職労からは、介護保険認定業務の委託提案で130名の雇止めを許さない闘いの報告がされました。どの労組も、引き続きの交渉に立ち上がっています。

・住民の命と暮らしに寄り添う非正規相談員~ねえ、聞いてきいて~

自治体の非正規労働者現役あるいは元の、婦人・家庭児童・生活困窮者支援の相談員からの、赤裸々な現場の報告を受けて、ライター・竹内絢さんのコーディネートでトークセッションをしました。相談員とは、人に言えない困難を抱えながらも、最後の砦として駆け込んでくる人々の声を聴き、いろいろな支援のネットワークにつなげていく。そこには、絶対的な信頼感と専門性が必要になってくる、そこで手が離れればもう後がない業務。そんな真剣勝負を低賃金で不安定雇用の非正規労働者が担っている。参加者からは、相談員の実状がよくわかったという反面、闘いの方向とか、公共の仕事としてどう保障していくかが見えないという声もあり課題を残しました。

・総務省に物申す、「任期の定めのない短時間勤務職員」を認めなさい~倉田哲郎・箕面市長~

総務省の調査研究会において、4年前からこの議論はありながら先送りされてきた。民間では、「短時間正社員制度」があり、厚生労働省がその導入を推奨している。現状を伝えながら市長は「任期のない短時間勤務職員」が必要な具体的な現場の例を引きその必要性を説きました。また、これまで総務省に自治体の条例での制度実現を伝えてきましたが、総務省は思考停止状態で苦し紛れの見解で否定されました。実際の所、自治体の非正規問題は、国も労働組合でもそのレンジ外にあり、私の主張が広がらなくて困っている。と述べられました。

・倉田市長を応援します~上林陽治(官製ワーキングプア研究会)~
総務省は、自治体の非正規労働者の処遇改善などの課題について、その財源は、4年前は、消費税増税で1300億円を地方交付税としてあてにしていたが、その後経団連から働き方改革の論議が起き、また、保育所・年金問題解決が迫られ、当初にはなかった非正規労働者の任用の厳格化が加わり、最後には安倍政権の幼保無償化が出て、消費税増税分へのあてが外れた格好で法案実施となっている。と法案をめぐる経緯を簡単に紹介され、今後も業務の実態にみあった処遇の制度実現を目指しましょう。と話されました。

・終わりに パンドラの箱を開けてしまった国!~脇田滋(官製ワーキングプア研究会)~
来年の春には実施となる会計年度任用職員制度は、多くの矛盾をはらみながらのスタートとなった、団結権問題や労契法 条の非適用など矛盾が激化し鮮明になった、今後闘いの余地は大いにある、とコメントされました。
議会や、マスコミからの参加も頂きました。また、参加者から、闘いの糸口が見えた、闘いに女性の声もおおく、一瞬でも希望の光が見えた等の声も聴き、今後の励みにしていきます。

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP