NTT事件西日本の違法を高裁も免罪

2011年01月14日

弁護士 増 田   尚

 NTT西日本が60歳定年となる従業員を継続して雇用する制度を設けていないのは違法であるとして、従業員としての地位確認や賃金(相当額の損害)を請求していた訴訟で、大阪高裁(紙浦健二裁判長)は、12月21日、NTT西日本を免罪した一審大阪地裁判決を追認し、元従業員35名の控訴を棄却する判決を言い渡した。

 NTT西日本は、01年にリストラ策を強行し、新設子会社にて最大30%減の賃金水準で再雇用するため退職するよう強要し、これに応じず自社に残った従業員に対しては、遠隔地・異職種の配転を押しつけ、60歳以降の契約社員としての再雇用制度(キャリアスタッフ制度)も打ち切った。その後、高年齢者雇用安定法が改正され、60歳を超えた従業員につき、定年の廃止ないし延長もしくは継続雇用制度の導入が義務づけられたにもかかわらず、NTT西日本は、何らの措置も講じなかった。通信労組に所属する組合員らは、リストラに応じなかったことを理由に、遠隔地・異職種の配転を強いられたり、京阪神間での無意味なローテーション配転をさせられるなど、苦汁を飲まされた挙げ句、60歳定年を理由に会社から放逐されたのである。

 一審大阪地裁判決は、高年法9条1項に定める措置をとらなかったとしても、従業員が継続して雇用することを求めることはできないと述べ、その私法的効力を否定した。また、NTT西日本が何らの措置を講じていないにもかかわらず、前記のとおり、自社を51歳で退職させて、最大30%減の賃金水準で子会社に再雇用することに応じた従業員のみを当該子会社で60歳以降は契約社員として雇用する制度を設けていても、高年法9条1項にただちに違反しないと判断した。改正高年法の趣旨を踏まえない暴論である。しかも、判決は、退職再雇用に応じて子会社で65歳まで稼働したとしても、そのままNTT西日本で60歳定年で退職した場合に比して、約159万円も収入が低くなっており、不合理な制度設計となっているにもかかわらず、「事業主が実情に応じて柔軟な措置をとることが許容されている」とか、「NTT労組の合意が得られている」とかの理由を付けて、五年もただ働きをさせられた上、約159万円も賃金を減額させられるような措置も許されるとまでいってのけた。

 35名の元従業員らは、全員控訴し、控訴審では、このようなずさんな認定と判断の是正を求めた。高裁も、一審判決が争点について充分な審理をしていないとの心証を示し、NTT西日本に釈明を要求するなどの姿勢を見せた。しかし、控訴人らが請求した証拠調べをいずれも採用せず、充分な審理と検討をしたとは言い難いものであった。

 控訴審において組合側は、キャリアスタッフ制度が就業規則上の制度であり、その廃止は不利益処分であって無効であるとして、キャリアスタッフとしての地位確認及び賃金請求を新たに追加した。NTT西日本は、驚くべきことに、当該就業規則の廃止手続をしていないと認めた。キャリアスタッフ制度はなお生きているのである。ところが、控訴審判決は、NTT西日本が募集を停止し、控訴人らも申込をしていないから、就業規則の効力如何に関わらず、請求は理由がないとした。明らかに判断を回避したのである。その上、新請求のうち期待権侵害についても、キャリアスタッフとして採用されることが定年退職前の労働契約の内容になっていないとか、募集停止によって期待権の侵害はないなど述べて、NTT西日本の明らかな失態に目をつむる判断をした。

 高年法違反の点について、控訴審判決は、一審判決のようには解さず、同法の趣旨に沿った制度設計でなければならないとの見解は示したものの、リストラの一環としてなされたとのNTT西日本の主張をもとに、前述のような従業員の受ける不利益はやむを得ないと判断した。また、高年齢者、すなわち五五歳以上になってから、継続雇用の希望を聴取すべきとの控訴人らの主張を認めたものの、継続雇用とは無関係に実施した「再選択」(リストラ策の修正で)をもって足りると判断した。

 しかし、このような判断をするなら、なぜ当事者から、リストラや再雇用拒否によって受けた不利益や、「再選択」の経緯を聴かなかったのであろうか。尋問もせず、このような事実認定をするのは、訴訟上の信義にもとるとのそしりは免れないであろう。

 とはいえ、継続雇用制度のあり方について高年法の趣旨から一定の制約を課す判断を引き出したことは、今後60歳「定年」を迎える従業員の継続雇用を求めるたたかいにとって前進の足がかりをつくったといえる。

 控訴人らは上告及び上告受理を申し立てた。たたかいの場は最高裁に移ったが、引き続くご支援をお願いする。

(弁護団は、河村武信、出田健一、横山精一、城塚健之、増田尚、井上耕史)