決議・声明・意見書

声明

カジノ誘致計画の認定に対する抗議声明

 政府は、2023年4月14日、大阪府および大阪市から申請がなされていたカジノを核とする統合型リゾートを誘致するための区域整備計画(カジノ誘致計画)を認定した。

しかし、カジノ誘致計画の認定は、国が新たなギャンブル依存症を生み出すものである。また、カジノに反対する多くの市民の声を無視するものである。カジノ誘致計画の認定は、断じて容認することができない。

 カジノ導入に伴うギャンブル依存症の問題は看過することができない。厚生労働省の調査でも、ギャンブル依存症の割合は成人の3.6%、約320万人と推計されている。大阪府市のIR推進局も、カジノ入場者の約2%がギャンブル依存症になると試算している。

ギャンブル依存症の増加を不安視する市民の声は強い。特定複合観光施設区域整備法も、カジノに対する依存防止対策のための措置を規定する。しかし、カジノ誘致に躍起の大阪府市では、ギャンブル依存防止対策を真摯に検討することはなかった。

カジノ誘致計画の認定は、新たなギャンブル依存症を生み出し、増加させるだけである。カジノ誘致の中止こそが、最大のギャンブル依存症防止策である。

 カジノ建設予定地の夢洲地域は、深刻な土壌汚染、地盤沈下、液状化が指摘されてきた。しかし、大阪市は十分な調査をすることもなく、具体的な対策を検討していない。近い将来、南海トラフ巨大地震の発生が危惧される中、地盤が軟弱な夢洲地域に多数の観光客を呼び込むことは、安全軽視甚だしい。

また、大阪市がカジノ建設予定地の賃料などの算定を不動産鑑定業者に依頼したところ、4社のうち3社で土地の価格や賃料などが一致し、大阪市が参考価格として設定した価格とも一致するなど、不動産鑑定への談合疑惑が浮上した。しかも、建設予定地はIR事業用地としての利用が予定されているにもかかわらず、それを考慮せずに算定されるなど賃料が格安であることも発覚した。大阪市民からは、建設予定地の賃貸借契約の差止めを求める住民訴訟まで提起されている。

 2023年4月9日投開票の大阪府知事・市長選挙では、カジノ誘致を強行した維新の会の吉村府知事と横山市長が当選した。しかし、朝日新聞や読売新聞の選挙直前の世論調査でも、IR誘致について反対が賛成を上回っている。市民からは、カジノ誘致の是非を問う住民投票を求める直接請求まで提出されていた。カジノ誘致に対して、けっして民意が得られたわけではない。

 政府は、カジノ誘致計画の認定にあたって、ギャンブル依存症対策、地盤沈下等の対策、地域との対話や良好な関係構築などの条件を付した。依存症対策等が講じられておらず、住民の声を無視するものであることを政府も認識していたのであり、政府はカジノ誘致計画を認定すべきではなかった。

 民主法律協会は、カジノ誘致に反対し、カジノ誘致を強行しようとする維新政治を府民本位の政治に転換することを求めてきた。

カジノ誘致計画を認定した政府に対して強く抗議するとともに、引き続き、カジノ誘致計画の中止を求めて奮闘することを決意する。

2023年4月17日
民 主 法 律 協 会
会長 豊川 義明

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