決議・声明・意見書

決議

高度プロフェッショナル制度の廃止などを求めるとともに、裁量労働制の拡大を許さない決議

2018年6月29日、安倍政権は、自民党、公明党、日本維新の会などの賛成を得て働き方改革推進一括法を強行に成立させた。
同法には47項目もの附帯決議が付されたが、このことは、いかにこの法律に多くの問題があり、この法律の審議が拙速であったかを示している。

新設された高度プロフェッショナル制度は、一定の労働者を労働時間規制の対象外とする。しかし、業務の内容と量、その達成期限などはすべて使用者が決定する。それをコントロールできない労働者の労働時間の規制を全くなくすことは、長時間労働による健康・生命への重大な危険を労働者にもたらすことは必須である。また、同法は、制度の対象者の年収要件や職種を政令に委任し、行政の判断だけで対象を拡げることを許すものであるが、勤労条件に関する基準を法律で定めることを要求する憲法27条2項の趣旨をないがしろにするものである。
単月100時間未満、2~6か月平均80時間以下という残業時間の上限規制も、過労死を引き起こすとされている過労死ラインと同じであり、国が、過労死ラインに達する長時間労働を法で許容することになる。
同法の附帯決議18項では、現行の裁量労働制の実態を正確に把握しうる調査手法を検討し、再調査を実施することとされている。現行の裁量労働制は、対象外の業務や労働者側に裁量がない事例においてまで、違法な長時間労働の手段として濫用されている。年収要件すらない。現行の裁量労働制の見直しこそ必要であり、裁量労働制の対象業務の拡大は、到底認められない。

働き方改革推進一括法の審議では、裁量労働制の適用労働者の労働時間のデータが不適切であったことや、高度プロフェッショナル制度について労働者のニーズがあるとの根拠とされていたヒアリングがわずか12名に対してしか行われておらず、しかも、法案作成後になされていた。法律が必要であることを裏付ける事実があるのかどうかや、適切に立法作業が行われたのかどうかについて、疑問が生じる事態が次々と明らかになった。

当協会は、同法が成立した後も、高度プロフェッショナル制度に反対し、労働時間規制の上限の引き下げを求めるとともに、今回見送られた裁量労働制の拡大を再度立法化する動きに反対するすべての個人、団体と連携することを決議する。

2018年8月25日
民主法律協会第63回定期総会

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