声明

検事長の「定年延長」に関する閣議決定の撤回を求め,検察庁法の改正に反対する声明

2020年05月14日

本年1月31日,安倍内閣は,同年2月に63歳となる黒川弘務東京高検検事長の任期を,国家公務員法(以下,「国公法」という。)81条の3第1項の勤務延長を適用し,同年8月までの半年間延長する旨閣議決定した。

しかし,検察庁法22条は,検察官の定年について検事総長を65歳とするほかは63歳と定めている。国公法の特別法たる検察庁法が国公法に優越することは当然であり,国公法の勤務延長が検察官に適用されることは法的にあり得ない。国公法の同規定が制定された当時の政府見解でも,検察官には同規定は適用されないという考え方が示されており,現にこれまで検察官の任期が定年を超えて延長された例はない。

当会は,本年2月28日,法治主義に違反する閣議決定による検事長の「定年延長」について,厳しく批判する声明を出したところである。

ところが,安倍内閣は,本年3月13日,検察庁法改正案を含む国家公務員法の一部を改正する法律案を通常国会に提出し,コロナ対策で十分な審議時間がとれないにもかかわらず,成立を急いでいる。この改正案は,検事長ら役職者の定年ないし勤務延長を,内閣又は法務大臣の判断で行えるというものである。

検察官は,公益の代表者として刑事事件の捜査・起訴等の検察権を行使する権限が付与されており,行政権に属しながらも他の権力からの独立が強く要請されている。政権トップの汚職事件等にも切り込まねばならず,過去にはロッキード事件やリクルート事件なども捜査・起訴してきた。

この改正案は,法的根拠のない黒川検事長の「定年延長」に,後付けで根拠を与えるだけでなく,政府が恒久的に検察官人事に介入できる仕組みを生み出すものであり,検察官の政治的中立性と独立性を脅かしかねない重大な問題をはらんでいる。

「検事長勤務延長閣議決定の撤回を求め,検察官の勤務延長制度導入に反対する弁護士共同アピール」には,192名の弁護士会会長・副会長経験者が呼びかけ人となり,23000名を超える弁護士が賛同し(いずれも本年5月13日現在),Twitterでの検察庁法改正案への抗議ツイートは900万件を超えるなど,改正案に反対する世論は広がっている。

当会は,再度,閣議決定による違法な黒川検事長の「定年延長」の撤回を求めるとともに,国家公務員法等の一部を改正する法案中の検察官の定年ないし勤務延長にかかる特例措置の部分に強く反対する。

2020年5月14日
民 主 法 律 協 会
会長 萬井 隆令