決議・声明・意見書

決議

真の長時間労働是正と非正規労働格差是正を実現するための労働法制の抜本的改正を求める決議

本年3月に政府は「働き方改革実行計画」を決定し、本年6月には労政審がこれに沿った建議(「時間外労働の上限規制等について」及び「同一労働同一賃金の法制度について」)を出した。一方で依然として政府は、裁量労働制の大幅拡大や高度プロフェッショナル制度を設ける労基法改悪を企図し、今秋の臨時国会にもこれらを盛り込んだ形での「働き方改革一括法案」の提出・成立を狙っている。

しかしながら、こうした安倍政権の「働き方改革」は、長時間労働是正と非正規労働の格差是正にはほど遠く、抜本的に見直す必要がある。

まず長時間労働の規制をさらに強化しなければならない。実行計画及び労政審建議は、長時間労働の是正のため、「36協定でも超えることができない、罰則付きの時間外労働の限度」を設けるとする。しかし、単月で100時間未満(複数月で80時間以下)、1年最大720時間(休日労働を含まず)の時間外労働を認め、自動車運転、建設事業、医師、研究開発等について対象外としている。これは過労死ラインであるおおむね月80~100時間の時間外労働にお墨付きを与えるものになりかねない。まともな働き方を実現するためには、月間及び週間の上限時間の抜本的な規制、並びに、終業から次の始業までの間に最低12時間の休息時間を置くことを義務づけるといったインターバル規制によって長時間労働の規制をさらに強化するとともに、労働時間の記録を罰則付きで義務付けるべきである。また、労働時間規制に逆行し「残業し放題」「働かせ放題」を容認する裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル制度は絶対に導入させてはならない。

次に、同一価値労働同一賃金を原則とし、その実現に向けた具体的かつ実効的な施策を実施しなければならない。実行計画は、「我が国から『非正規』という言葉を一掃すること」を目指すとした。そうであれば、言葉だけ一掃するというのはまやかしである。有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者という働き方そのものの改革を目指すべきである。また、実行計画及び労政審建議は、処遇の違いについて使用者に説明義務を課すとした。しかし、同一労働同一賃金を真に実現するためには、合理性の立証責任を使用者側に課すべきである。派遣については待遇差の説明を派遣元にしか求めないものとなっており、無意味である。逆に建議では、不合理な労働条件禁止の考慮要素として「その他の事情」の中から「職務の成果」、「能力」、「経験」を例示として明記することを求めており、非正規・正規労働者の格差を合理化させる方向につながりかねず、むしろ改悪である。派遣労働者についても、派遣労働者との均衡・均等待遇のほかに労使協定による一定水準を満たす待遇決定でも良いという抜け穴が用意されようとしている。

以上のとおり、政府の「働き方改革」として出そうとしている法制度自体がまともな働き方の実現にとって極めて不十分で、改悪といえるものもある上、さらに「働かせ放題」の労基法改悪を含めた一括審議については、当協会はこれに断固反対し、労働者の尊厳を守る立場からまともな働き方を実現するために実効性のある法規制を求めるものである。

2017年8月26日
民主法律協会第62回定期総会

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