声明

テロ等準備罪(共謀罪)法案の国会提出に反対する声明

2017年02月16日

今国会で、2003年以降、過去に3回も廃案になった共謀罪が、「テロ等準備罪」などと名称を変えて法案提出されようとしている。

法案の全内容は未だ明かされないものの、2人以上が犯罪の計画(共謀)をすれば、そのうち一人でも何らかの準備行為をするだけで、全員を処罰するものであることが明らかとなっている。従前の政府説明によれば、実行すれば4年以上の懲役・禁固刑で処罰することが可能な犯罪の計画を対象とするもので、600を超える罪が新設されることとなる。

政府は、テロ対策のためにテロ等準備罪(共謀罪)が必要などと、その創設の必要性を主張する。しかし、既にテロ対策の法整備はなされているし、政府説明からしてもテロと無関係な行為も処罰対象とするものであり、政府の主張はまやかしである。

さらに政府は、「テロ等準備罪は共謀罪と異なるもので、共謀段階ではなく、準備行為があってはじめて処罰される」と言うが、およそ何らかの行為があれば「準備行為」とされうるし、また、「『共謀』をした」とされた者のうち一人でも準備行為をすれば処罰できるとするのであるから、結局、「共謀」すなわち「意思」を処罰するものである。しかも、その対象とされる犯罪が多数かつ広範囲にわたることからすれば、国家権力による恣意的で不公正な捜査・取締・処罰が行われる危険性が高い。

また、政府は、「テロ等準備罪(共謀罪)は、『組織的犯罪集団』のみが対象であり、処罰対象は限定される。一般人は関係ない」とも言う。しかし政府は、「『組織的犯罪集団』は既存の集団に限られない」とし、さらに、「既存の集団の活動が一変した場合にも『組織的犯罪集団』となる」としており、その定義が極めて曖昧なものとなることが明らかである。結局、国家権力が、どの者らが「組織的犯罪集団」で、どの者らが「一般人」であるかを決めることとなり、恣意的で不公正な捜査・取締・処罰が行われる危険性が極めて高い。この点、戦前の凄まじい思想弾圧を可能とした治安維持法が、当初は「社会運動が治安維持法のため抑圧せられることはない」などとして成立したにも拘らず、その後拡大適用され、労働運動家、宗教家をはじめ多くの「一般人」が処罰されたことを想起せざるを得ない。

テロ等準備罪(共謀罪)は「共謀」すなわち「意思」の連絡を処罰するものであるから、意思の連絡の手段方法が捜査の対象ということになる。つまり、電話、FAX、電子メール、室内での会話等が捜査の対象となろう。そのため、捜査当局の捜査方法は、盗聴や潜入活動(スパイ活動)等に頼ることとなり、昨年改悪された盗聴法等と相まって、労働組合、市民団体、NGO、政党などの活動に対する監視が著しく強化されることとなる。また、「『共謀』した」との密告さえあれば、団体やその関係者に対する逮捕・勾留・捜索・差押えなどの強制捜査が可能となり、時の権力に不都合な団体の弾圧に濫用される危険性が高い。

例えば労働組合が、労働条件向上のために街頭宣伝やストライキをする決議をした場合、執行委員会等における集団的討議が「恐喝罪の『共謀』に該当する」などとして捜査の対象とされかねない。さらに、労働組合やその活動を嫌悪する使用者が、労働組合もしくはその組合員が「『共謀』を行った」として告訴、告発するなど、テロ等準備罪(共謀罪)を利用して組合活動を妨害することさえ十分に考えられる。これでは、憲法上保障された労働基本権(団結権・団体交渉権・争議権)は空文となり、労働組合活動は萎縮させられ、圧殺されることとなる。

安倍政権により憲法違反の安保関連法(戦争法)が国民の強い反対にもかかわらず強行成立させられ、戦闘状態にある南スーダンPKOに自衛隊が派遣されるなど、今日、我が国が海外で武力行使を行う危険が高まっている。戦前の治安維持法が我が国の侵略戦争に反対する国民を弾圧した歴史に照らせば、テロ等準備罪(共謀罪)は、我が国の海外での武力行使に反対する意見を抑圧し、「戦争する国づくり」を推進することをも狙ったものと言わざるを得ない。

平和・民主主義・国民の権利を守り発展させることを目的とする当協会は、国家権力による恣意的で不公正な捜査・取締・処罰が行われる危険性が高く、労働運動をはじめとする市民運動・社会運動を抑圧し、戦争する国づくりにつながるテロ等準備罪(共謀罪)法案について、その国会提出に強く反対するものである。

2017年2月16日
民 主 法 律 協 会
会長 萬井 隆令