声明・アピール・決議
  格差と貧困の温床となっている偽装請負の根絶と
     労働者派遣法の抜本的見直しを求める決議

  1.  派遣・偽装請負(個人請負を含む)など間接雇用の問題は、格差社会と貧困を生み出す大きな要因となっている。間接雇用労働者は、使い勝手のよい労働力として、労働分野の底辺に位置づけられ、その非人間的な就労実態と生活実態のため、文化的な生活はおろか、健康や生命さえ脅かされる状況にある。この点、OECD(経済協力開発機構)の調査報告書において、日本の貧困率が増加している要因について、政府が主張している高齢化は格差拡大の一因にすぎず、「主な要因は労働市場における二極化の拡大にある」とされているところである。

  2.  しかしながら、政府は、偽装請負の問題については、職業安定法により全面的に禁止されているにも関わらず長年にわたって放置し続けてきた。また、派遣に関しては、違法派遣を放置しながら、逆に、その違法な就労実態を法律を変えて適法にするというやり方でその適用範囲を拡大し続けてきた。
     昨今の間接雇用者のたたかいや、マスコミによる実態報道などを受けて、厚生労働省はようやく違反行為の是正に一定程度取り組むようになり、また、昨年9月4日には、はじめて偽装請負取り締まりに関する通達を出した。それらの結果、偽装請負・派遣とも、調査した事業所の7割〜8割について違法が認められるというすさまじい違法実態が全国的に明らかとされた(2006年10月〜11月にかけて大阪労働局で行われた偽装請負摘発キャンペーンでも、65事業所中54事業所(84%)で偽装請負等の違反が認められている)。
     しかしながら、全体からみれば是正はごく一部にとどまっており、違反を繰り返す事業所も後を絶たない実態にある。また、厚生労働省の通達は、労働者の雇用安定を図る具体的措置が明記されないなど極めて不十分な内容であり、また、監督強化のための財政的・人員的措置を伴わないものであるため、蔓延する違法を根絶する姿勢であるとは到底評価できないものである。

  3.  また、このような状況であるにもかかわらず、日本経団連は、さらに、2006年規制改革要望(2006年6月20日)において、派遣関連の重点要求として、@事前面接等の禁止の撤廃、A雇入申込義務の撤廃、B派遣禁止業務の解禁を挙げ、その他の要求として、C自由化業務の期間制限撤廃、D専門26業種の見直しを挙げ、さらなる派遣法改定を行うよう政府に迫っている。自らが空前の利益を挙げており、一方で間接雇用労働者が格差と貧困にあえぎ、違法な就労に苦しんでいる最中に、大多数の労働者を派遣に切り替え、自ら雇用責任をとらずに恒常的に労働者を使用できる枠組みを作ろうとしているのである。

  4.  労働者の生活や権利を全く顧みないこのような就労のあり方は、もう終わりにしなければならない。殊に青年労働者が未来を奪われている事態は早急に是正されなければならない。
     当協会は、現在の違法な就労実態の早急な是正を求めるとともに、直接雇用の原則に立ち返って実質的な使用者が雇用に責任を持つ就労関係を実現するため、労働者派遣法の抜本的見直しを強く求める。

                        記

    1 直接雇用の原則及び労働者派遣が一時的臨時的雇用形態であることを確認し、職業安定法及び労働者派遣法違反行為の根絶のために、監督行政を財政的・組織的に強化し、摘発・指導を強めること。監督・指導にあたっては労働者の雇用の安定が第一に図られるべきこと

    2 労働者派遣法の適用範囲のさらなる拡大に反対するとともに、労働者派遣の業種制限解禁の見直し、派遣労働者の派遣先への直接雇用のみなし規定の導入をはじめ、労働者の直接雇用の拡大と雇用の安定を可能とする労働者派遣法の抜本的見直しを図ること

2007年2月18日
 民主法律協会 2007年権利討論集会
   
 
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