声明・アピール・決議
   日本型「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入を許さず
        人間らしい働き方を取り戻そう


  1.  日本の労働現場はいま、不安定雇用労働者をはじめとして低賃金と無権利状態にあえぐ一方、正社員も含めて過密・長時間労働に苦しんでいる。家族間の絆が絶たれ、かけがえのない個人の自由な生活が奪われる事態が広がっている。労働者の肉体的・精神的ストレスも強まり、職場内の不和やいじめ、過労死・過労自殺者が増大している。
     にもかかわらず、政府は、労働者を保護し、格差社会の是正・貧困の救済の施策をとろうとはせず、逆に、財界の強い要求に応えて、アメリカの「ホワイトカラー・エグゼンプション」の日本版の導入を画策している。本年1月27日には、これを「自己管理型労働制」と銘打って「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」にまとめ、今国会での成立を狙ってきた。

  2.  要綱によれば、「自己管理型労働制」とは、対象労働者について労使委員会での決議等があれば、労働基準法で定められている労働時間規制及び割増賃金支払義務規定を一切適用しないというものであり、対象労働者は、@労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事する者、A業務上の権限及び責任を相当程度伴う地位にある者、B業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする者、C年収が相当程度高い者、の要件を満たす者とされている。
     しかし、使用者は、労働者が行うべき業務内容、業務量及び業務完了の期限等を自由に指揮命令できるのであるから、実際には労働者が労働時間を「自己管理」することなどできない。むしろ、命じられた業務をこなすために、残業代の支払もない状態で、果てしない長時間労働を強いられる。
     また、対象労働者に関する要件はあいまいであり、唯一具体的な年収要件についても、厚生労働省令で定めるとされているので、一度法律が成立すれば、年収要件を引き下げて対象労働者の範囲はいくらでも広げられる。労働時間規制が実質上無になる危険があるのである。
    さらに、対象労働者の健康に関しては、週40時間を超える在社時間等がおおむね月80時間程度を超える場合で、かつ、労働者からの申し出があった場合に、医師による面接指導を行うという規制しかなく、ある労働政策審議会の使用者側委員が述べたように、まさに「過労死は自己管理の問題」とする制度となっている。
     このように、「ホワイトカラー・エグゼンプション」は、いかなる名称をつけようとも、「残業代ゼロ法」であり「過労死促進法」であることに何ら変わりはない。

  3.  政府は、先日、この法案の今国会提出を見送る方針を決めたといわれている。しかし、これは与党が、今後のいっせい地方選挙、参議院選挙をたたかう上で不利になるので今は避けておこうと判断しただけで、選挙後には国民の理解を得たと強弁して国会に提出される可能性は極めて高い状況にある。
     我々は、労働者が長い歴史の中で勝ち取り、グローバル・スタンダードともなっている一日8時間・週40時間労働制を守るため、また、労働者の生活と権利を守るため、この法案の問題点を世論に訴え、その提出を真に断念させるまでたたかう。そして、人間らしい働き方を取り戻すための議論と取り組みを強めていく所存である。

  4.  なお、上記エグゼンプション法案とあわせて労働政策審議会の答申がなされた「労働契約法案」についても、@雇用の多様化のもとで経済的に従属している個人事業主が対象とされていない、A一定の条件があれば、使用者側が一方的に定めることができる就業規則の変更をもって労働契約の内容を変更できるとしている、B非正規雇用の正規雇用への転換についてなんら触れられていないなど、依然として重大な問題が含まれている。われわれは、このような労働契約法案も、とうてい認めることはできない。

2007年2月18日
 民主法律協会 2007年権利討論集会
   
 
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