声明・アピール・決議
小泉首相の靖国神社参拝に抗議し、日本を「戦争をする国」に変質させる
憲法改悪、教育基本法改悪、国民投票法の制定を断固阻止する決議
  1.  2005年11月28日、自民党は結党50周年党大会で、「新憲法草案」を正式に発表した。
     新憲法草案は、現憲法の前文を全面的に書き換え、侵略戦争の反省のうえに明記されている不戦の決意も平和的生存権の保障も削除した。その上で、第2章の表題を「戦争の放棄」から「安全保障」に変え、現憲法9条2項(戦力の不保持、交戦権の否認)を削除して、かわって、9条の2を新設して、自衛軍の保持と自衛軍による「国際的に協調して行われる活動」を明記した。加えて、同草案は、軍事裁判所の規定を設け、日本を「戦争をしない国」から「戦争する国」へと変貌させようとしている。
     また、同草案は、前文で国民に対し、「帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務」を課すとともに、12条・13条で国民の権利及び自由を「公益及び公の秩序に反しない」限りのものとし、国益や国家の秩序に個々人以上の価値を認めている。
     そのほか、同草案は、国会の軽視、内閣総理大臣の権限強化、地方自治の後退、法律による政党規制、憲法改正要件の緩和を盛り込むなど、国家権力の濫用から個人の尊厳を守るために現憲法が謳った自由主義、民主主義を破壊しようとしている。

  2.  2006年4月28日、政府は教育基本法「改正」法案を閣議決定し、同日国会に提出した。
     同法案は、国民の教育権から国家の教育権へと変容させる点、国定道徳・徳目を強制し、「人格の完成」から国家の求める「人格の形成」へと変容させる点、教育行政が「教育振興基本計画」の策定を通じて教育内容を統制することを認めている点で、到底是認することのできないものである。
     政府は、子供による事件が頻発していることや学力低下、引きこもりなどを解決するために教育基本法を変える必要があるとしている。しかし、現行の教育基本法がそのような問題の原因になっているのでなく、むしろ現行教育基本法の理想を無視し、その実現を妨害し続けてきたことが、その原因になっているのである。
     政府の真の狙いは、教育基本法を改悪することによって、政府・財界が推し進める新自由主義改革の担い手、戦争国家の担い手を育成すること、これらを自主的に進んで実践する国民、批判しないで甘受する国民をつくり出すことであり、憲法改悪と軌を一にしたものである。

  3.  さらに、2006年5月26日、自民党・公明党の与党は、「日本国憲法の改正手続法案」という名称で、改憲手続法案である国民投票法案を国会に提出した。
     そもそも、同法案は、@日本を「戦争をしない国」から「戦争をする国」に変えてしまう憲法をつくることを目的とする点で許すことのできないものであるが、そのほかにも、A「国民投票運動の広範な禁止」を許していること、B憲法改正案の要否並びに解説などの憲法改正案の広報に関する事務を行う「憲法改正案広報協議会」の委員の選任が、各議院における各会派の所属議員数の比率により各会派に割り当てられるため、同協議会の委員の圧倒的多数が改憲派から選任されることになり、「不平等、不公正な宣伝の氾濫」をもたらすおそれがあること、C「財力によるマスメディア不平等利用」を放置すること、D現憲法96条1項の国民の「過半数」要件を「有効投票」の過半数とし、しかも最低投票率を定めていないこと、E一括投票の危険が払拭されていないこと等、国家の基本法たる憲法を改正するための法案として、余りに欠陥が多すぎる。

  4.  このように、政府与党が、次々と日本を戦争する国に変質させるための動きをあからさまに見せる中、2006年8月15日、小泉首相は、現職首相としての終戦記念日における靖国参拝を21年ぶりに強行するという暴挙に出た。
     かかる首相の行為は、現憲法20条3項に定める政教分離原則に違反するとともに、平和を求める国民やアジアの人々に敵対するものであり、かつ、侵略戦争を反省し否定することによって成り立ってきた戦後の国際秩序に正面から反する行為である。

  5.  こういった一連の動きは、まさに日本を「戦争する国」に変質させることを目的にしてなされているものである。
     今や世界の流れは紛争を話し合いによって解決する方向に進んでおり、現憲法9条はこのことを先駆的に定めたものである。私たちは、世界の先頭に立って、現憲法9条を実現する努力を積み重ねることによって、国際社会における信頼を得ることが必要であると考える。

  6.  私たちは、小泉首相の靖国神社参拝に強く抗議するとともに、日本を「戦争する国」に変質させる憲法改悪、及びこれと軌を一にした教育基本法改悪、国民投票法の制定を阻止するために全力で取り組むことを決意するものである。

     以上、決議する。

2006年8月26日
                       民主法律協会第51回定期総会
   
 
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