声明・アピール・決議
新裁量労働制(日本型ホワイトカラー・エグゼンプション)の導入に断固反対する決議
  1.  2006年1月25日、厚生労働省労働基準局長の諮問機関である「今後の労働時間制度に関する研究会」が公表した報告書は、年休等の取得促進等にも触れてはいるが、その最大の眼目は、現行法の「管理監督者」に加え、「中堅の幹部候補者で管理監督者の手前に位置する者」や「研究開発部門のプロジェクトチームのリーダー」等について、勤務態様、年収、本人の同意、健康確保、労使協議を要件として、労働時間規制(1日8時間・週40時間労働の原則、休憩、休日、深夜業等)の適用を除外する「新しい自律的な労働時間制度」を導入することにある。
     報告書は、「米国のホワイトカラー・エグゼンプションをそのまま導入することは適当でない」としているが、その内容は、「新たな裁量労働制」であり、「日本型ホワイトカラー・エグゼンプション」に他ならない。
     この研究会の発足や今回の報告書の背景には、財界の意向を受けた「規制改革・民間開放推進3か年計画」の閣議決定(2004年3月19日)や日本経団連の「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」(2005年6月21日)があることは明らかである。

  2.  「企業間競争の激化等により、技術確信のスピードが加速し、製品開発のスピード・質が求められている」状況のもとで、「労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価される」上記のような労働者が、「自律的に働く」ことは何を意味するか。それは、現在これらの労働者が、無制限・無定量の労働(その多くはサービス残業である。)を余儀なくされ、過労死や過労自殺が多発していることを見れば明らかである。
     また、現在の労使の力関係をみるとき、「本人の同意」や「労使協議による合意」といった要件が、労働者の意に反する導入の歯止めとなるかは、大いに疑問である。

  3.  労働時間の規制は、「生活時間を確保しつつ、仕事と生活を調和させ」るための最低限の保障であり、現行法は決して自律的な働き方を阻害するものではない。また、既に現行法でも裁量労働制や変形労働時間制、フレックスタイム制といった柔軟・弾力的な制度があり、個別企業でも能力主義賃金体系や年俸制の採用が可能であり、現に採用されている。現時点で、上記のような制度を導入する必要性はない。
     報告書が、真に「心身が健康であることは全ての労働者にとってその能力発揮の大前提である」と考えているのなら、労働時間規制の除外ではなく、現在横行している不払い残業や36協定の「限度基準」を超える違法な長時間労働を、厳格に取り締まることこそが必要である。

  4.  よって、当協会は、報告書が提案する上記のような「新裁量労働制」の導入に、断固として反対するものである。

2006年2月19日
                       民主法律協会2006年権利討論集会
   
 
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