声明・アピール・決議
労働者派遣法の抜本的見直しを求める決議
  1.  1986年7月1日労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)が施行され今年で20年目を迎える。間接雇用の緩和政策は拡大され、2004年の労働者派遣法の改悪は、製造業への労働者派遣の解禁の道を開き、2007年2月には製造業でも3年の派遣が可能となる。

  2.  非正規労働者数は、年々増加し、労働力調査結果によれば、全労働者の中に非正規労働者がしめる割合は2001年の24パーセント強から2005年には30パーセントに達している。

  3.  違法な派遣・請負も増加し、2004年度の厚生労働省の全国事業所訪問調査の結果、 訪問をうけた事業所の51パーセントの事業所が是正指導を受けていたことが明らかとなった。昨年10月から12月に実施された大阪労働局の個別訪問指導の結果においても、訪問した派遣元のうち、61パーセントを超える事業所において問題点が発見され、派遣先事業所については34パーセントにあたる事業所において問題点が発見され、請負業者のうち62・5%に当たる業者で問題点が指摘され指導が行われたことが公表された。

  4.  増加した非正規社員の多くは、正社員よりも低い賃金や労働条件を受け入れざるを得ない状態に置かれている。正社員の3分の1程度の賃金で労務提供を行っている事例など非正規社員の置かれている実態は看過できない状態である。
      常用労働者に代わって広がっている派遣社員に対する権利保障の規制を強め、直接雇用の義務規程を遵守活用するなどの派遣労働者の雇用安定のための抜本的な施策の実施が求められている。

  5.  しかし、平成17年12月21日に発表された規制改革民間推進会議の第2次答申は、 仕事と育児を両立する多様な働き方の推進のためとして、派遣労働者の事前面接の禁止の撤廃や直接雇用の申込み義務規程の見直しを求めている。この答申は、派遣労働における規制が逆に派遣先の派遣労働の導入を阻み、多様な働き方を損なっていると派遣労働者の不安定の原因が法規制にあるという実態に反した特異な論理を展開している。

  6.  厚生労働省が平成16年に実施した派遣労働者実態調査の結果によれば、派遣労働者の33パーセントが派遣先での直接雇用を望み、22・3パーセントが契約期間の長期化を求め、20・6パーセントが年休取得を取りやすくして欲しいと派遣先に要望している。調査結果は、派遣労働者の多くが、自由に働いている実態になく正社員と同様年休をとれない状態で働き、就労先での長期的で安定した契約を希望している事を示している。
     規制改革推進会議の答申は派遣労働者の実感に反し、無権利状態を悪化させるものであり、決して答申のような見直しがされることがあってはならない。
     当協会は、非正規労動者の雇用の不安定化を強める規制改革推進会議第2次答申に反対し、直接雇用の原則を守る施策を充実するため、以下のとおり意見を表明し、公正雇用保障のため労働者派遣法の抜本的見直しを強く求める。

                         記

    1 職業安定法第44条の遵守と直接雇用原則を堅持し、労働行政における同法違反の監督権限を強化し、摘発、指導を強めること

    2 労働者派遣法による労働者派遣が、一時的例外的雇用形態であることの原則を確認し、派遣元のみならず、派遣先への指導・勧告・助言のための労働行政権限強化と人員と予算の拡充をすること

    3 労働者派遣の業種制限の解禁を見直し、派遣労働者の派遣先への直接雇用のみなし規定の導入を初め、労働者の直接雇用の拡大と安定と保障を可能とする労働者派遣法の抜本的見直しを図ること

2006年2月19日
                       民主法律協会2006年権利討論集会
   
 
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