声明・アピール・決議
憲法改悪を許さない決議
  1.  この間、自民党は改憲論議を具体的に進め、民主党もこれに同調する方向を進めた。 そして、日本経団連はもちろん、連合までもが、9条の改正にまで踏み込んだ議論を行うことを公然化するなど、憲法改正に向けた動きが急ピッチで進んでいる。改憲への重要なプロセスとしての国民投票法案についても、与党実務者協議会が進み、民主党も対案を提出するなど、与野党の垣根を越えた改憲へ策動が一層鮮明になってきている。

  2.  こうした中で、2005年7月7日、自民党の新憲法起草委員会は、「憲法起草委員会・要綱第1次素案」(以下、「素案」という)を発表し、これに基づき、8月1日、改憲要綱案の条文案(新憲法第一次案)を発表した。本年8月に発表された自民党政務調査会の「自民党重点施策2006」(以下「重点施策」という)においても、「新憲法制定に向け、本年11月15日までに、党憲法草案を策定します」とされ、新憲法案をたたき台に本年11月の自民党党大会への憲法草案提出が予定されている。
      しかし、素案や新憲法案に現れた中味は、現行憲法の基本原理を否定し、日本を「戦争する国」に変質させようとするもので、到底容認できるものではない。

  3.  素案は、「明治憲法、昭和憲法の歴史的意義を踏まえ、日本史上、初めて国民自ら主体的に憲法を定める」のだという。
     しかし、新憲法案は、9条の2を新設して自衛軍の保持を明記し、米軍と自衛隊との共同軍事行動を可能とする「集団的自衛権」が含まれることを予定している。重点施策でも、9条2項を改正して軍隊を持ち、それによって集団的自衛権の行使を可能にすることが明記されている。現行憲法は、アジアの民衆2000万人、日本国民300万人の犠牲から生まれた国内外に向けた「平和の誓い」であるが、新憲法案はこの誓いを反故にし、日本がアメリカと一緒になって戦争をする国になることの宣言に他ならない。歴史教科書や靖国公式参拝問題で、中国や韓国をはじめとするアジア諸国からの反発が強まる中で、ますます日本に対する不信感が増すおそれがある。
    さらに、新憲法案は、基本的人権についても、「公益及び公の秩序」による制限を認め、新憲法案では削除されたものの、素案では、国民に対し、国家の安全と社会生活を維持するために「尽力すること」までを求めていた。また、無秩序な競争社会、新自由主義的な構造改革路線を賛美し、基本的人権よりも国益を優先する内容となっており、憲法によって国家権力を拘束して個人の人権を守るという立憲主義の否定といわざるを得ない。重点施策でも、「自由と権利には、責任と義務が伴うことを自覚しつつ、21世紀の日本の国家像を明らかにする党憲法草案を策定」するとしており、個人の尊厳が後退した立憲主義否定の立場がいっそう明らかになっている。
    4 私たちは、このような憲法改悪を阻止し、憲法を暮らしの中に活かしていくために、9条をはじめとする憲法の諸原則が、今日ますます光り輝いていることを広く訴え、広範な運動を広げていくことを決意する。
     
2005年8月27日
                       民主法律協会 第50回定期総会
   
 
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