声明・アピール・決議
安全、安心のJRを労働者の力で構築する決議

 平成17年4月25日、JR福知山線塚口駅・尼崎間において発生した快速(上り)電車の脱線転覆事故は、死者107名、負傷者460名に及ぶJR発足以来の大惨事となった。
 私たちは、亡くなられた方々のご冥福を祈り心から哀悼の意を表するとともに、負傷された方々の一日も早い回復を願っている。そして、二度とこうした悲惨な事故を起こさないため、労働組合と力を合わせて、公共交通機関利用者に資するため抜本的な安全対策の構築に向けて全力で取り組むことを決意した。
 事故原因の究明については、現在も、航空・鉄道事故調査委員会や兵庫県警において調査が行われている。調査により現在までに明らかになったものとしては、事故を起こした電車が伊丹駅でオーバーランし、その遅れを取り戻すために制限速度を毎時30キロメートルも上回る毎時100キロメートル以上のスピードで事故現場のカーブに進入していたこと等が挙げられる。JR西日本には、事故原因究明について事故調査委員会に全面的に協力し、徹底的な事故原因究明を図るとともに、今後抜本的な安全対策を講じることが求められている。
 事故を引き起こした背景には、ATS−P型の設置など安全対策への設備投資の遅れ、運転士が事故やミスを起こした場合の再教育問題等が取り上げられており、JR西日本が営利追及のみに奔走し、公共交通機関として最も重要な安全性の確保を軽視した経営の姿勢があることは明かである。
 昭和62年のJR発足後、JRは、18年間で1万8000人の徹底した人員削減を図り、その結果、現場では要員不足が慢性化することとなった。さらに加えて、JRは、さらなる人件費削減のために契約社員、職員の外注化を拡大し、技術継承問題や年休未消化問題を放置し一向に改善を図ろうとはしなかった。
 他方で、阪神間の競合私鉄との利用者獲得競争に打ち勝つために、列車の増発、スピードアップ化を図り、「余裕時間」ゼロに近い過密ダイヤ、無理なダイヤを維持するための安全軽視の労務管理の強化を図ってきた。
 さらに、安全性を二の次にして「稼ぐ」ことを第一の経営方針にして走り続けるJRに対し、国土交通省は、安全基準さえも「規制緩和」の名のもと事業者任せにし、事実上これを後押ししてきた。これら国土交通省の責任も重大である。
 事故から約3か月後にあたる7月22日、国労、建交労、大阪労連、民法協の4者で本件事故を引き起こした背景事情を検証する趣旨でシンポジウムを行った。シンポジウムに先駆けて、民法協で現職の運転士、車掌に対して労働実態アンケートを実施したところ、当初の予想以上に詳細な回答が多数得ることができた。かかる結果は、単なるアンケートに止まらず、現場の乗務員から私たちに対する切実な訴えであると受けとめている。
 私たちは、今回のような事故を二度と引き起こしてはならないという強い決意のもと、法律家、労働組合ともに討議を重ねながら、JR西日本に対しては、ATS−P型の設置や乗務員教育の改善・見直し、過密ダイヤ解消に向けた「余裕時間」を確保可能なダイヤ改正、そして社外の専門化を入れた「対策委員会」の設置などを要求している。また、国土交通省に対しては、安全の基準を設け、鉄道事故の専門官の増員を求めている。
 JR西日本は、事故発生後2か月経たないうちの6月19日、福知山線の運転を再開した。私たちは、JR西日本が「営利優先」から「安全第一」に企業理念を変えること、「命令と服従」「事実隠ぺい」をもたらす労務管理を改め、不当労働行為を根絶して正常な労使関係を確立することなど、安全輸送の確率と健康で安心して働ける労働条件の改善を列車の両輪として、JR西日本、ひいてはそれを後押ししてきた政府の責任を追及していくことを決意する。また、JRに働く全ての労働者と公共交通機関の利用者との連帯、共同を強めることにより、安全輸送の確立と公共交通に対する利用者からの信頼の回復を目指して奮闘することを誓う。


2005年8月27日
                       民主法律協会 第50回定期総会
   
 
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