声明・アピール・決議
教育基本法「改正」に反対する決議
  1.  2003年3月20日に中央教育審議会が教育基本法の改正点について答申を出し、与党間でも今国会での改正案提案へ向けての協議が続けられ、教育基本法問題は重大な局面を迎えている。1月27日の新聞報道では、今国会での「教育基本法改正案」提案を断念との報道がなされたが、自民党議員の激しいつきあげや文部科学大臣が今国会提出を断念していないと発言するなど、なお今国会への「改正案」提出の可能性は消えていない。

  2.  文部科学省は「教育基本法案(仮案)」を提出検討中の法案としており、かつその内容も「全面改悪」の意図を持ったものである。また、小泉首相は、施政方針演説で「国民的な議論をふまえ、積極的にとりくんでまいります」と述べ、日本経団連の発表した「わが国の基本問題を考える〜これからの日本を展望して〜」と題する報告書の中でも、憲法改正とともに、教育問題が重要課題として取り上げられ、その中で教育基本法の見直しが提言されている。また、地方議会における教育基本法改正促進決議の動きも顕著である。このように教育基本法改悪の策動が執拗に続けられ、自民党の今年度運動方針には、「教育基本法の今年度中の実現」が掲げられており、政府・与党関係者のこの間の発言からみても、教育基本法の改悪を、憲法改悪と一体化させて本格化させようという動きがますます強まることが予想される。

  3.  政府・与党のねらう教育基本法の「改正」は、現行法の1条「教育の目的」でうたわれた「個人の尊厳」と「平和的な国家及び社会の形成者」を削除し、教育基本法の精神そのものを解体しようというものである。教育基本法はこれまでも、政府によって十分に尊重されてきたとは言い難く、日の丸・君が代の強制にみられるようにこれを無視する傾向が顕著になっている。しかし、個人の尊重と平和主義をその目的に据えた教育基本法は、憲法を無視して軍事大国化へ進みつつある現在において、その存在意義をますます高めている。教育基本法から、平和主義が削除され、愛国心が盛り込まれれば、国家に対する忠誠心があらゆる場で強制されることになる。学校だけでなく、社会全体で、国家に従うこと、「お国のために血を流すこと」が善であるという考えがすり込まれることになる。それは、個人の尊厳を究極の価値として、徹底した平和主義に立脚する日本国憲法9条の改悪にも直結するものである。
     さらに教育基本法10条については、「教育は不当な支配に服することなく」と定めた現行規定を「教育行政は不当な支配に服することなく」と意味を大幅に変更し、「教育振興基本計画」を国が定めることとして教育行政のなかでの国家統制を法文上も盛り込もうとしている。

  4.  私たちは、教育基本法が日本国憲法のもとでの次の世代を育てる重要な基本法であり、また、学力テスト事件や教科書検定裁判など、戦後の教育をめぐる裁判のなかでも重要な役割を果たしてきたことをあらためて確認する。そして、これからの世代の中に平和と民主主義、基本的人権をしっかり定着させることを願って教育基本法「改正案」の今国会提出に強く反対し、今後も教育基本法の改悪を阻止する運動に全力を尽くすものである。

2005年2月13日
                       民主法律協会 2005年権利討論集会
   
 
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