声明・アピール・決議
「合意による弁護士報酬の敗訴者負担制度」導入法案に反対し、廃案を求める決議
 政府は,2004年度通常国会に「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」=「合意による弁護士報酬の敗訴者負担制度」を導入する法案を提出した。同法案は実質的な審議を経ないまま継続審議扱いとされたため,今秋の臨時国会が同法案の実質的な審議入りとなる。
その骨格は,
@ 原則各自負担とし,合意があった場合に敗訴者負担とする。
A 敗訴者負担の合意は,訴訟提起後代理人双方の共同申立てによる。
というものである。

 しかしながら,合意による敗訴者負担制度は,以下のとおり根本的な問題があり,容認することはできない。

 第1に,裁判上での敗訴者負担制度導入は,裁判外の契約による敗訴者負担にお墨付きを与えることになりかねない。そうすると,労働契約,消費者契約,借地借家契約等に敗訴者負担条項が入り,結局,労働者,消費者,借地借家人等,社会的・経済的弱者は相手方の弁護士費用負担を恐れて裁判することが出来なくなる。
 第2に,合意をしなければ裁判所に勝訴の自信がないとの心証を持たれかねず,合意をすれば敗訴者負担のリスクを負わされることになる。社会的・経済的弱者は,相手方の弁護士費用を気にして困難な選択を強いられるのに対し,大企業等の強者側は,そのような心配をせずに敗訴者負担を選択することができる。結局,弱者側に不利に働くことになる。
 第3に,不法行為による損害賠償請求等,一定の類型には,被害者側に弁護士費用を「損害」として請求することが認められている。合意による敗訴者負担制度が導入されれば,弁護士費用は同制度によるべきとして,両当事者が合意しない限り,被害者側が弁護士費用を請求することが出来なくなるおそれがある。

 弁護士報酬の敗訴者負担制度は,たとえ合意によるものであっても,結局は,労働者,労働組合,一般市民,中小企業等,多くの国民の司法アクセスを阻害し,司法による救済を断念させ,その権利を奪うものとなる危険が大きい。私たちは,憲法で保障された裁判を受ける権利,ひいては国民の諸権利を奪うことになりかねない,合意による弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入に反対し,今秋の臨時国会での廃案を求めるものである。
 以上,決議する。

2004年8月28日
                           民主法律協会 第49回定期総会
   
 
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