声明・アピール・決議
教育基本法「改正」反対決議
  1.  小泉首相は先の通常国会の施政方針演説で、教育基本法「改正」について「国民的議論をふまえ、精力的に取り組む」と明言した。そして3月20日、教育基本法の見直しについての中央教育審議会の最終答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」が出され、また6月16日には自民党と公明党による「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(中間報告)」が公表された。この中間報告では改正に向けた基本方針と法案の具体的な項目・内容が明らかにされている。
     即ち、基本方針は@教育基本法の改正法案は、議員立法ではなく、政府提出法案であること、A改正方式については、一部改正ではなく、全部改正によること、B教育基本法は、教育の基本的な理念を示すものであって、具体的な内容については他の法令に委ねること、C簡潔明瞭で、格調高い法律を目指すこととされている。
     さらに具体的な項目・内容については、「教育の目標」としては「正義と責任、・・・、公共の精神を重視し」と責任と公共心を強調し、また「伝統文化を尊重し、郷土と国を愛し(ないしは「大切にし」)」として愛国心の涵養を強調している。

  2.  しかし、教育基本法「改正」は憲法改悪の策動と直結したものとして許すことは出来ない。
     即ち、教育基本法「改正」の主たる目的は、@教育の目的を「人格の完成」から侵略戦争を支える「人づくり」「兵士づくり」にすり替えること、A国が「教育振興基本計画」によって教育内容に踏み込み、国家権力による教育の支配に道を開くことにある。
     そしてその背景には、自衛隊のイラク派兵、有事法制の具体化などの戦争政策と並んで、教育の側面からも「戦争をする国民づくり」をし、これによって憲法改悪を実質的に先取りし、憲法改悪をより容易にしようとの狙いがある。
     また第2の背景として、グローバリゼーションのもとで生き残りを図る財界の露骨な意図がある。
     即ち、グローバリゼーションの中で日本企業が国際競争力を維持するためには優秀なエリートが必要であり、少数エリートを効率よく育成するためにはすべての子どもの教育レベルを引き上げるのは無駄であるとして教育の機会の平等を奪おうとしている。そして非エリートに対しては国家に忠実で従順な人間にすべく教育に国家主義のイデオロギーを持ち込もうとしている。

  3.  以上の通り、教育基本法「改正」は、教育に対する真摯な分析から出てきたものではない。現在の教育に課せられた課題については、現行の教育基本法の理念に立ち返ることこそが解決への道筋であって、教育基本法を「改正」する必要はどこにもない。
     今行われようとしている教育基本法「改正」は、改憲勢力と財界の合作として、教育の理念とは無縁の別の目的からなされようとするものである。教育基本法「改正」の行き着くところは「戦争をする国家、国民」であり、断じて許すことは出来ない。
     以上の通り、決議する。

2004年8月28日
                           民主法律協会 第49回定期総会
   
 
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