声明・アピール・決議
自衛隊の多国籍軍「参加」に反対し、自衛隊のイラクからの即時撤退を求める声明
  1.  政府は、国連安保理決議1546号を受けて編成されるイラクの多国籍軍に自衛隊を参加させるためのイラク復興支援特別措置法施行令改正と、基本計画の変更を閣議決定した。これにより、イラクに主権委譲がなされ、新たな多国籍軍が編成される中で、自衛隊は初めて多国籍「軍」の一員となった。憲法は、武力行使による国際紛争の解決を拒否しており、いかなる理屈を用いようが、今回の多国籍「軍」への参加は、憲法違反の事実をさらに上塗りする暴挙である。

  2.  そもそも、この多国籍軍は、武力の行使を含めたあらゆる手段を行使する権限を持つものであり、このような多国籍軍に参加することは、自衛隊が武力行使をしない場合であっても、「武力行使と一体となった行為」に該当し、憲法に違反するということは、歴代政府が繰り返し説明してきたことである。現に14回にも及んで編成された多国籍軍には、一度たりとも自衛隊は参加してこなかったのである。憲法は、国際紛争を武力で解決しないと定めているのであって、多国籍軍という軍隊への参加は、どう考えても憲法の理念に反する。

  3.  その基本的立場を自ら踏みにじり、国民にも諮らず、国会での審議をほとんど行わないまま、小泉首相の独断で日米首脳会議での対米意思表明を先行させたことは、日本国民を愚弄し、日本をアメリカの属国にさせるものに他ならない。

  4.  政府は、自衛隊は多国籍軍司令部との間で連絡・調整を行ない、多国籍軍の指揮下に入るわけではないとして、自衛隊の独自の指揮権を確保することを強調している。また、イラク特措法の下で、従来どおり「非戦闘地域」で活動することで、他国の武力行使と一体化するものではなく今までの活動は何も変らないと説明している。
     そして、日本側の方針は「米英両政府との間で了解」に達しているとしている。
     しかし、この「了解」とは、在米英公使と米国務省、英外務省の高官との口頭の了解に過ぎず、その高官の氏名も、その了解の原文すらも明らかにされていない。このようなあいまいな了解で、多国籍軍の指揮下に入らないなどというのは詭弁に過ぎない。

  5.  多国籍軍参加に伴い、自衛隊は多国籍軍司令部と連絡・調整を図りながら、医療・給水などの復興支援活動を継続する一方、武器を携行した米英兵の輸送も認められる「安全確保支援活動」も引き続き行うことになる。そこでは、他国部隊の武力行使との線引きが不可能であり、どうみても「武力行使と一体となる行為」を行うことになるのであり、憲法違反は明白である。
  6.  このように、憲法の根幹にかかわる重大問題であるにかかわらず、国民への説明責任を果たさないまま閣議決定を行ない、イラク特措法施行令の改正によって、自衛隊の多国籍軍参加を既成事実化しようとするものであり、2重、3重に国民を愚弄するものである。このような国民と国会を無視し、民主主義を揺るがす暴挙は断じて許されないものである。
  7.  そもそも、今回の多国籍軍の実態は、いかに国連決議に基づくとはいえ、米英占領軍が形を変えただけのものである。ファルージャの住民を虐殺し、無差別空爆を仕掛け、アルグレイブ刑務所で人権無視の虐待を繰り返してきた米英軍に対するイラク市民の不信感は極限に達しており、多国籍軍の活動がイラクの復興支援に役立たないことも明白である。
  8.  自衛隊員によるイラク国民の殺害といういう最悪の事態に至っていない今ならまだ間に合う。自衛隊は、イラクから即時に撤退すべきである。
     われわれは、自衛隊の多国籍軍参加という憲法蹂躙の暴挙に対し、厳しく抗議するとともに、改めてイラクからの自衛隊の即時・完全撤退を求めるものである。

2004年7月12日
                           民主法律協会
会長 小林つとむ
   
 
← BACK TOP↑