声明・アピール・決議
産業別最低賃金廃止の検討に反対し、全国一律最低賃金制度の確立を求める声明
 昨年年末の政府総合規制改革会議第三次答申において、産業別最低賃金の見直しが打ち出されたことを受けて、厚生労働省が廃止の方向で検討に入ったことが報道されている。
 これは、財界が、長年にわたり、地域別賃金より1割高い産業別最低賃金を廃止し、低水準の一本化を求めてきた動きに応じたものである。
 しかし、今回の産業別最低賃金の廃止の動きは、到底容認できない。
 そもそも、憲法25条は、健康で文化的な最低限の生活を営むことを保障しており、最低賃金制度は、労使の力関係や社会情勢に委ねておくと社会的に不公正な低賃金が横行しかねないので、国が、労使の賃金決定に介入し、賃金額の最低限度を定めて使用者に対してその遵守を法的に強制する制度である。もっとも、現行の最低賃金制度は、企業の支払い能力やコスト削減を重視し、労働者の生計費を無視しているため、生活できないような低賃金水準となっており、人間らしい生活と労働を保障する最低賃金制度の趣旨からすると、その引き上げこそが今求められる。
 ましてや、リストラによる雇用不安と労働法制の緩和に伴い、低賃金の雇用が激増する昨今の雇用情勢からして、賃金切り下げ競争に歯止めをかけるためにも最低賃金制度が本来の役割を果たすことが、ますます必要な時期である。
 ちなみに、産業別最低賃金は、製造業を中心に全国409万人の基幹的労働者を適用下においているが、企業内のパートの賃金や正社員の初任給に連動し、その上に正規雇用の賃金が積み上げられており、その意味では、賃金全体を下支えする役割を果たすものであり、その廃止は、さらなる賃金破壊、底なしの賃下げをもたらすものであり、到底許されない。
 民主法律協会は、最低賃金の廃止や現行最低賃金の引き下げには断固反対するとともに、全国どこでも、民間、公務員、アルバイト、パート、派遣の区別なく、全ての労働者に適用される全国一律最低賃金制度の確立を求めるものである。

2004年5月11日
                           民主法律協会
会長 小林つとむ
   
 
← BACK TOP↑