声明・アピール・決議
民間人拘束の蛮行に抗議し、イラクからの自衛隊の即時撤退を求める声明
  1.  昨日、イラクの武装グループが、NGOやジャーナリストら日本の民間人3名を拘束し、3日以内に自衛隊のイラクからの撤退が決定されなければ、3人を殺害することを予告してきた。
     拘束されているのは、劣化ウラン弾廃絶の活動を行ってきた今井紀明さん(北海道札幌市、18歳)、イラクのストリートチルドレン救済活動にかかわってきた高遠菜穂子さん(北海道千歳市、34歳)、フリージャーナリストの郡山総一郎さん(東京都杉並区、32歳)の3名である。

  2.  民主法律協会は、まず、武装グループが、無辜の民間人を人質にとり、要求が受け入れられなければ、殺害するという脅迫を行っていることに対して、卑劣かつ非人道的な行為であり、断じて容認できない蛮行として強く抗議する。
     また、協会は、日本政府に対して、拘束された3人の安全と釈放のために、全力を尽くすことを強く求めるものである。

  3.  民主法律協会は、これまで、米英軍によるイラク戦争が国際法に違反し、大義のない戦争であることに加え、フセイン政権崩壊後の米英軍中心の占領統治が、民衆の不満と抵抗の意識を広げ、テロを発生・拡大させており、日本政府が、こうした戦争と占領統治を支援するために自衛隊をイラクに派遣することに強く反対してきた。
     そして、今、イラクでは、危惧されていた事態が次々と起こっている。イスラム教スンニ派の武装勢力ばかりか、シーア派の強硬派も占領への抵抗を強め、戦闘が各地に広がり、全土が「戦闘地域」となり、しかも、反米勢力の攻撃は、占領協力をする有志連合の軍隊にも向き始めた。サマワに駐留する陸上自衛隊の宿営地近くでも、自衛隊に向けて3発の迫撃砲弾が打ち込まれている。
     しかるに、昨日、福田官房長官は、「自衛隊は人道復興支援を行っており、撤退する理由はない」と発言した。しかし、今のイラクにおいて、自衛隊が「人道支援」の名の下に活動しても、宿営地近くに迫撃砲弾が打ち込まれたように、占領軍である米英軍の支援軍と見られて自衛隊そのものがテロの攻撃目標となるし、いずれ、自衛隊が、イラク国民に対して武力行使せざるを得ない事態が発生するおそれがある。また、最近、航空自衛隊が武装したアメリカ兵を空輸するなど、むしろ、自衛隊の存在は、米英軍のイラク占領支配を補完するものであることは、ますます明らかになっている。
     このように、イラクには、自衛隊派遣の根拠である「非戦闘地域」がもはや存在しておらず、また、自衛隊が人道支援にとって最も不向きな組織であることが明らかになった以上、政府が、自衛隊のイラク派遣を正当化する根拠は全て崩れ去ったものと言わなければならない。

  4.  民主法律協会は、政府に対して、自衛隊の派遣の論拠が全て崩れ去り、かつ、民間人3名の救出という重大な事態に接して、速やかに自衛隊のイラクからの撤退を決断することを強く求めるものである。

    以上
2004年4月9日
                           民主法律協会
会長 小林つとむ
   
 
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