声明・アピール・決議
指定管理者制度の導入に関する決議
  1.  政府は先の通常国会で地方自治法を「改正」(第244条の2)し、「公の施設」の管理委託につき、従来の管理委託制度を廃止し、「指定管理者制度」を導入した。

  2.  これまでも保育園やゴミ処理施設、体育館、勤労会館などの「公の施設」の管理は外部に委託されていたが、委託先は地方自治法上の公共団体などに限定され、かつ施設の管理権限・責任は行政に残されていた。
     これに対し、指定管理者制度は委託先を限定せず、かつ指定管理者に施設の使用許可・利用料金の決定・利用料金収受の権限を与えるもので、行政には施設所有権しか残されない。これにより純粋な営利企業である株式会社の参入が可能となり、行政はこれに包括的権限を与える反面チェックをしないことになる。
     しかも3年以内に指定管理者制度にするか直営に戻すかの選択をしなくてはならないことになっており、今後直営施設、新設施設ともに指定管理者制度に変更されることが強く懸念される。

  3.  しかしながら、指定管理者制度には以下のような重大な問題点がある。
     まず第1に住民に対する行政の公的責任が後退するおそれがあることである。指定管理者には限定がなく、株式会社の参入も可能であるところ、経費節減・効率性を重視した運営がなされればサービスの切り捨て、後退につながりかねず、住民の人権を保障すべき自治体本来の公的責任を放棄することになる。
     第2に、指定管理者に対して住民による民主的コントロールができないことである。この制度のもとでは施設の運営への利用者・住民の参加や、住民監査請求を含めた民主的コントロールの手続が保障されていない。また議会への報告義務もない。
     第3に、兼業禁止規定が適用されない結果、首長や議員、その親族が経営する事業者が指定される可能性があり、腐敗・不正の温床になるおそれがある。
     第4に、何よりもゆゆしき問題なのは施設職員の雇用と労働条件に重大な問題が出ることである。総務省は指定管理者の選定にあたり複数業者による競争によることを指示しており、経費削減のために施設職員の身分・労働条件は非常に不安定なものとならざるを得ない。その結果、施設本来の機能が低下し、住民の人権保障にとっても重大なマイナスとなる。

  4.  以上の指定管理者制度は、政府・財界が推し進める構造改革路線の一環であり、「構造改革特区」「地方独立行政法人」と並ぶ自治体リストラのツールである。総合規制改革会議第2次答申(2002.12.12)で「消費者主権に立脚した株式会社の市場参入・拡大」として強く推されていたことからも分かるとおり、「官製市場」の「民間開放」を求める財界の要求に沿ったものに他ならない。
     その結果として、本来住民の人権保障のために付与されている地方自治体の権限と責任を自ら放棄することとなり、住民の人権保障が後退することは明らかである。
     以上より、現行の直営施設については公的責任を放棄することなく今後も直営を維持すべきである。また現行の管理委託施設については、施設職員の雇用安定化のために現在の当該管理委託先を指定管理者とするべきである。さらに今後新設する公的施設については直営を基本とし、指定管理者制度をとる場合でも実績のある公的団体が指定されるべきである。 
2004年2月15日
                           民主法律協会
2004年権利討論集会
   
 
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