声明・アピール・決議
労働者の権利救済に実効性ある労働審判制度を求める決議
 司法制度改革推進本部労働検討会で、昨年12月19日、「労働審判制度の概要(案)」が承認され、今年の通常国会へ法案提出が予定されている。
 「制度概要」によると、「個別労働事件について、3回以内の期日で、裁判官(1名)と雇用・労使関係に関する専門的知識経験を有する者(労使各1名)が、当該事件について審理し、調停による解決の見込みがあればこれを試みつつ、合議により、権利義務を踏まえつつ事件の内容に即した解決案を決すること(労働審判)によって事件の解決を図る手続き」とされる。
 近年、解雇、賃金・退職金不払い、残業代不払い、セクハラなどの個別的労使紛争が、増大しており、他方、裁判の時間的、費用的なハードルが高く、多数の労働者が泣き寝入りをしている状態である。今回導入される労働審判は、低額で、かつ簡易な手続きで申し立てることができ、しかも、裁判官の法的判断に加えて労使の専門家の経験・知見を適切に解決内容に盛り込むことができるなど、労働者の権利救済に実効性ある制度でなればならない。
 協会としては、今回の「制度概要」が「相手方の意向にかかわらず手続きを進行させ、原則として、調停により解決し又は労働審判を行う」として、労働審判手続きの開始や労働審判を行うことについて相手方の同意を不要としたこと、調停や確定した労働審判は裁判上の和解と同一の効力を有するとしたこと、労働審判について異議のある当事者から2週間以内に異議の申立があれば、労働審判は効力を失うものの、労働審判手続きの申立時に、労働審判がなされた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなすとされていることなどは、制度の実効性を担保するものとして評価できる。
 さらに、労働審判制度を労働者の権利救済に実効性あらしめるために、以下の点が盛り込まれることを求める。

     記

1 申立手続きは、本人ができるように簡略化し、口頭での申し立ても可能とすること、また、費用も低額化すること
2 雇用・労使関係に関する知識経験を有する者については、労働法令関係、労使関係の制度・技術・慣行等の実情に対する知見を有し、労使紛争の調整力・判断力が必要であるが、全国の地裁に配置できるだけの人材を早急に確保するとともに、その研修の機会を保障すること、また、専門家委員の選任にあたっては、労働組合の潮流に配慮するなど公正な基準に基づき、かつその選任過程が透明であること
3 労働審判制度の導入に伴い、労働審判を担当する裁判官、書記官の増員、審判廷の増設など、裁判所の人的物的拡充をすること
4 今回提言された労働審判制度の導入によって、労働参審制度を棚上げすることなく、早急に導入の検討をすることを求める。

2004年2月15日
                           民主法律協会
2004年権利討論集会
   
 
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