声明・アピール・決議
イラクへの自衛隊派兵に反対する声明
  1.  ついに痛ましい事件が起きてしまった。
     イラク北部のティクリットで現地時間11月29日夕方、復旧支援活動中の日本人外交官2人が襲撃され、死亡した。イラク戦争が始まってからの、日本人初の犠牲者である。
     政府は、この間、イラク及びその周辺国での、武力、テロ事件が頻発する事態の中で、アメリカの顔色を見ながら「年内早期派兵」の方針を二転三転させた。
     ところが、このような事態になっても、小泉首相は「テロには屈しない」として、この事件によりイラク復興支援措置法に基づく自衛隊の派兵方針は不変であることを明言している。

  2.  政府は、自衛隊の活動範囲を「非戦闘地域」に限定するとし、自衛隊が米英軍と一体となって武力行使を行うことへの批判をかわそうとしてきた。
     しかし、イラクでは、米英占領軍への攻撃が続き、アメリカのメディアも「ベトナム化」を口にするほど、米英軍の不法な軍事占領がイラク国民の怒りと憎悪を呼び起こしている。このような状況の中での自衛隊派遣は、アルカイダによる日本へのテロ警告に示されるように、派遣そのものが新たなテロの標的を生むことになり、テロの連鎖が引き起こされる危険性が極めて強い。
     また、小泉首相は、「ブッシュ政権は大義と善意をもって、イラク復興に尽くしている」と言って自衛隊派兵を正当化するが、イラクでは、米英軍を「解放軍」ではなく、「占領軍」であるとする世論が多数をしめるに至っている。このようなイラク世論の中で、アメリカの占領体制に政治的にも経済的にも最大の支持・協力を表明する日本政府による自衛隊派遣が、中立的な立場でイラクの復興支援に協力するものではなく、アメリカの占領協力と見られる危険性は極めて高い。
     今回の日本人襲撃事件の真相は明らかになっていないが、このような状況の中で起きたものである可能性は否定できない。

  3.  終戦宣言以降も、多くの米英軍死傷者が続出し、国連機関や米英以外の国の軍隊、NGO職員を狙ったテロと、それに対する米英軍の報復攻撃という暴力の連鎖、悪循環に陥っている。また、イラク国内はもとよりトルコなど周辺国へもテロが拡大し、急速に治安が悪化している。「イラクに対する戦争は『地獄の門』を開くことになる」と警告された事態が現実のものになっており、イラクは、未だに戦争状態にあると言わざるを得ない。
     このような中で、平和憲法を踏みにじってイラク派兵を強行することは、イラク情勢の泥沼化に拍車をかけ、日本が侵略の加担者となることを意味する。それは、イラク国民やテロ組織のさらに強い抵抗をもたらし、自衛隊員が殺傷されたり、逆に自衛隊員がイラク国民を殺傷するおそれがあるのみならず、報復テロによって日本国民の命を危険にさらし、日本全体が暴力の連鎖に巻き込まれることになりかねない。

  4.  イラク侵攻が、国際法に違反した無法・非道な侵略戦争だったことは、今や国際社会の常識になりつつある。アメリカの国内でさえ、イラク戦争は間違っていたと考える市民が5割に達している。
     世界各国の平和を愛する人々が、早期のイラクの主権回復と国連を中心とした復旧・復興を求めている。今ほど、暴力の連鎖を断ち切り、国連中心の復興への枠組みへの切替が強く求められているときはない。

  5.  民主法律協会は、日本政府に対し、アメリカの侵略行為に加担し、イラク復興支援にも逆行する自衛隊派兵の即刻中止を強く求めるものである。

2003年12月2日
                           民主法律協会
会長 小林つとむ
   
 
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