声明・アピール・決議
テロ対策特別措置法の期間延長に反対し、
   海上自衛隊のインド洋からの即時撤退を求める声明
 政府は、アメリカの対テロ戦争への自衛隊支援を2年間延長するテロ対策特別措置法「改正」案の採決を今臨時国会で10月10日にも強行し、本年11月1日までの自衛艦の派遣期間をさらに継続しようとしている。

 もとより、この法律は、9.11テロに対して、アメリカが開始した報復戦争を支援するため、自衛隊を海外に出動させる目的で制定されたものであり、国際紛争を解決する手段としての武力の威嚇、武力の行使を否定した憲法9条を真っ向から踏みにじる違憲立法である。したがって、このような明白な違憲状態をさらに延長する本法案は、断じて許されるものではない。
 報復戦争から2年経過し、米軍はアフガニスタンの民衆に無差別の空爆を加え、多くの犠牲者を生み出したが、ビンラディンは拘束されておらず、アルカイダのネットワークもなくなっていない。
 アフガニスタンでも、イラクでも、武力ではテロ問題は解決せず、かえって各地でテロの連鎖を引き起こすという泥沼状態になっていることは、国際的な常識になっており、国連のアナン事務総長も「軍事力だけでテロを敗北させることができると考えるなら、間違いをおかすことになる」と指摘するに至っている。
 ところが、小泉首相は、改正の理由の説明を求められても、「今、アフガンから手を引いたら、国際的な批判を受ける。」の一点張りで、まともな説明をしていない。
 しかし、そもそも、現在、海上自衛隊が支援している「対テロ」海上作戦は、縮小の一途をたどっており、米軍艦船や参加国の数は激減している。この期に及んで海上自衛隊がインド洋で活動する必要はまったく認められない。
 また、政府は軍事作戦であることを理由として、自衛隊の具体的な活動内容をまったく明らかにしていない。これでは、なぜ延長の必要があるのか検証すらできない。
 それにもかかわらず、政府が海上自衛隊の派遣期間延長に固執するのは、第156通常国会で強行成立されたイラク派兵法による航空自衛隊・陸上自衛隊の海外派兵と相まって、アメリカの軍事戦略に応え、自衛隊の海外派兵を既成事実とし、その恒常化を図るところにあると言わざるを得ない。
 このことは、国際紛争を解決するための戦争を放棄した憲法9条及び前文の精神を完全に蹂躙するものである。

 さらに、この間、テロ特措法に基づいて派遣された海上自衛隊の補給艦が、どさくさにまぎれてイラク戦争に参戦している米国空母キティホーク機動部隊に給油を行っていたことが明らかになっている。
 もとより、テロ対策特措法に基づく自衛隊の活動はアフガニスタンでの対テロ作戦の支援に限定されており、これは明らかな脱法行為である。
 このように、テロ特措法の枠組みさえ踏み外し、憲法違反の既成事実を重ねていくことは断じて許されない。

 今、日本がなすべきことは、平和を希求する世界の諸国民と共同して、テロを許さない国際社会の一致団結した取り組みでテロを封じ込めていくことであり、国連を中心とした非軍事的解決に努力することである。

 私たちは、憲法違反のテロ対策特措法「改正」案に断固反対するとともに、現在インド洋に展開している自衛艦を即時撤退させることを求める。
2003年10月9日
                           民主法律協会
会長 小林つとむ
   
 
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