声明・アピール・決議
「地方独立行政法人法」成立に抗議する声明
 今国会で、7月2日、地方独立行政法人法案が参議院本会議で与党の賛成多数で可決された。同法は、住民サービスの見地から必要であるが、地方自治体が直接実施する必要はなく、とはいえ採算性に乏しく民間に委ねては実施されないおそれがある事業を地方自治体から切り離して独立した法人とするためのものである。
 同法の概要は以下のとおりである。
 独立行政法人を設立し、あるいはこれに出資できるのは地方自治体に限られる。その対象業務は、@試験研究、A大学の設置・管理、B地方公営企業法適用8事業(水道、工業用水道、軌道、自動車運送、鉄道、電気、ガス、病院等)、C社会福祉事業、D公共施設の設置・管理と、きわめて広範である。
 地方独立行政法人は、特定地方独立行政法人(公務員型)と、一般地方独立行政法人(民間型)とに分けられる。いずれも企業会計原則がとられ、中期目標、中期計画、各年度計画の各段階で目標管理がなされ、これを設立団体にもうけられる「評価委員会」が評価する仕組みとなっている。中期目標は、「住民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項」、「業務運営の改善及び効率化に関する事項」、「財務内容の改善に関する事項」等について定めるものとされ、設立団体の長は、中期目標期間終了時に、「当該地方独立行政法人の業務を継続させる必要性、組織の在り方その他その組織及び業務の全般にわたる検討」を行うものとされるから、評価いかんによっては業務が継続されないこともありうるということである。
 地方独立行政法人へ移行する際、当該業務に従事する地方自治体職員は当然に地方独立行政法人の職員となるとされ、従前の地位を喪失する。異議申立もできない。しかも、移行後の職員の給与・退職手当は業務の実績を反映するものとされ、民間の会社分割の場合と違って、賃金その他の労働条件が承継される保障もない。さらに、給与の基準が(特定型においては勤務時間、休憩、休日及び休暇規定までもが)住民に公表される。
 同法には、以下の重大な問題がある。
(1)地方独立行政法人の対象業務は、そのほとんどが本来は採算を度外視しても住民の人権保障の見地から地方自治体の業務とされているものである。地方独立行政法人はこれを地方自治体から切り離し、企業体として経営させるというものである。しかも「評価委員会」の評価は、あくまで経営主体としてのものであり、人権保障主体としての評価ではない。したがって、地域住民の人権を保障し生活を守るという地方自治体の公的責任が著しく損なわれる。
(2)地方独立行政法人においては、賃金労働条件の引き下げが容易にでき、さらに業績いかんによっては解散・全員解雇もありうるとされている。これは究極の「企業再編型自治体リストラ法」にほかならない。しかも労働者が使用者責任を問おうにも、労働条件を事実上左右する「評価委員会」や、地方自治体の責任は不明確にされている。驚くべき労働者軽視である。
(3)地方独立行政法人は、重要な公共サービスを市場原理に委ねるものであり、議会の民主的コントロールを形骸化させるもので、住民自治の理念に反するものである。
 当協会は、地方地方自治体の存在意義を覆し、地方自治体に働く労働者の権利をないがしろにする、同法の成立に強く抗議するものである。
2003年7月3日
                           民主法律協会
会長 小林つとむ
   
 
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