声明・アピール・決議
個人情報保護関連5法案成立に関する声明
 5月23日、政府提出の個人情報保護関連5法案が、衆議院に引き続き参議院においても賛成多数で可決され、成立した。
 与党は、先の臨時国会において廃案となった個人情報保護法案や行政機関個人情報保護法の全面「改正」案について、報道の定義を明確化するなどの修正を加えて今国会において再度提出した。しかしながら、今回成立した法律案においても、昨年廃案となった法律案の本質的な問題点は改められていない。
 すなわち、今回成立した個人情報保護法では、自己情報コントロール権に関する規定は全く不十分・不明確であり、他方で、個人情報取扱業者に対する監督権限は主務大臣に残され、国家が個人情報保護という名目で、労働組合、民主団体、法律家団体等を含むあらゆる個人情報取扱事業者に対して情報規制を行うという法案の基本的性質は維持され、国家による個人情報の管理、情報統制、言論統制を招く危険があることについてはなんら改善されていない。
 また、同じく先の臨時国会において廃案になった行政機関個人情報保護法の全面改正案についても、政府は行政機関の職員を対象とした罰則規定をもうけることなどの修正を加えて今国会に提出してきたが、重大な問題点は放置されたままである。すなわち、今回の「改正」では、自己情報コントロール権に関する規定は不明確であり、一方、行政機関による個人情報収集に関する制限はなく、また、目的外利用等に関しては行政の大きな裁量が許されるうえ、罰則の規定も不十分であると言わざるを得ない。これでは、行政機関の有する個人情報の保護としては不十分というほかない。
 以上のように、今回成立した個人情報保護法においては、民間に流通する情報・言論について国家による管理・統制の危険が払拭できない一方で、行政機関個人情報保護法については、行政による情報収集・管理に対する規制が不十分であるという根本的な問題を抱えていると言わざるを得ない。また、いずれの法律においても、国民の自己情報コントロール権の規定が不明確と言わざるを得ない。
 よって、協会は、今回の法案の成立に重大な危惧の念を表明するとともに、個人情報保護法及び行政機関個人情報保護法に関して、上記の点を改善した法改正を速やかに行うよう要求する。
2003年6月17日
                           民主法律協会
会長 小林つとむ
   
 
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