声明・アピール・決議
「横浜事件」再審決定を支持し、検察の即時抗告に抗議する声明

  1.  「改造」や「中央公論」などの雑誌編集者らが治安維持法違反の罪に問われた戦時最大の言論弾圧事件とされる「横浜事件」で、元被告らの遺族が申し立てた第三次再審請求に対して、横浜地裁は、さる4月15日、再審の開始を認める決定を出した。
     決定は、ボツダム宣言の受諾によって「有罪判決の根拠となった治安維持法1条、10条の罰則規定は、思想の自由などを定めた宣言と抵触し、同年8月14日の時点で実質的に効力を失うに至った」と指摘し、「治安維持法の規定で違反者を処罰することは同宣言の条項と抵触し、法的に許されない」とした。
     この決定は、検察側の「再審制度は事実誤認に対する救済のための制度で、法の解釈・適用に関する問題は再審事由とはなり得ない」との主張について、「これを認めなければ今回のような事件では有罪判決を受けた者が積極的に救済を求める手段がなくなってしまう」として再審を認めたものであり、法の解釈・適用に関する問題を再審事由にあたるとした初判断であるとともに、戦前の天皇制下で生じた誤審を正す重要な意義を有するものである。そもそも、この事件では、元被告は共産党再建に協力したという具体的証拠がないまま、拷問による自白のみに基づいて有罪判決を受けており冤罪の疑いが濃厚である。関係者の多くは、既に死亡しており、再審で早急に名誉回復が行われる必要がある。

  2.  協会としては、平和と基本的人権を守る立場から、今回の再審決定を支持するとともに、検察の即時抗告(4月18日)に強く抗議する。
     また、事件は、戦前の「治安維持法」権力による言論弾圧であるが、現在政府が、国会に提出している個人情報保護案は、国家による個人の情報・思想統制につながるものであり、横浜事件に象徴される歴史の教訓に照らしても、廃案を強く求めるものである。

                     
2003年4月22日
                          民主法律協会
会長 小林つとむ
   
 
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