声明・アピール・決議
解雇「自由化」法制についての緊急声明

 厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会は、12月3日、「今後の労働条件に係る制度の在り方について(報告)(案)」をとりまとめた。この報告案は、労働契約終了等のルール及び手続に関して、@労働契約終了のルールを策定すること、A裁判における救済手段を設けるとしている。
 労働契約終了等のルール、いわゆる解雇ルールの策定については、判例上の解雇権濫用法理がこれまで十分に周知されていなかった状況にあることから、解雇を規制する法規範を早急に確立する必要がある。民主法律協会/声明・アピール・決議
 しかし、今回の報告案では、解雇は原則として自由であるという点が強調され、解雇が無効とされる場合は例外的にすぎないとしている点で重大な問題がある。むしろ、判例上確立している解雇権濫用法理や整理解雇4要件論を後退させ、解雇規制を緩和させる方向につながることが強く危惧される。また、解雇は原則として自由であると明文で規定してしまえば、「正当な理由がないこと」の立証責任は労働者側に課せられることとなりかねない。労使当事者間における証拠の偏在や圧倒的な経済力の格差からすれば、違法な解雇であったとしても裁判上は解雇が無効とされない結果となる危険性がきわめて大きい。
 さらに、報告案では、解雇の効力を争う裁判における救済手段について、解雇が無効と判断される場合であっても、労使当事者の申立てに基づいて、労働契約を終了させ使用者に対し労働者に一定の額の金銭の支払いを命ずることができることとすることが提案されている。また、その金額については厚生労働大臣が定める額とすることが模索されている。
 しかし、使用者からの申立てによる金銭賠償を認めれば、使用者としては、金銭さえ支払えば正当理由がなくても自由に解雇できるという結果となってしまうのであり、解雇には正当な理由を要するという判例法理がまったくの骨抜きとなってしまう。このような使用者側からの金銭賠償請求を認めることについては断固として反対する。

 私たちは、労働者の働く権利を擁護するため、解雇を緩和・自由化する法制には断固として反対するとともに、正当理由なき解雇は直ちに無効であることを明確にする解雇規制立法を制定することを求めるものである。
2002年12月16日
                           民主法律協会
会長 小林つとむ
   
 
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