決議・声明・意見書

決議

アメリカ政府による国際刑事裁判所(ICC)赤根智子所長らへの制裁に抗議し、その撤回と日本政府の毅然とした対応を求める決議

 2026年8月18日、アメリカのルビオ国務長官は、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長及び同所の上級法廷弁護士アブドゥライェ・セエ氏を、制裁の対象に指定した。制裁は、アメリカ国内の資産の凍結やアメリカへの入国禁止にとどまらず、資金、物品及び役務の提供・受領を含め、制裁対象者との一切の取引を禁止し、違反には民事上・刑事上の制裁を科すものである。対象者を国際的な経済活動から排除し、その生活の基盤そのものを奪いかねない措置である。ルビオ国務長官は、本年7月、加盟国にICC脱退を呼びかけ、ICCに対する制裁を強化する方針を発表するなど、反ICCキャンペーンを行っていたところであった。

 ルビオ国務長官は、制裁の理由について、ICCの管轄権に同意していない国の国民等の訴追に関与したことを挙げているが、抽象的な指摘にとどまり、両氏のいかなる職務行為が問題とされたのかは、何ら明らかにされていない。アメリカ政府が、これまでICCの管轄権に同意していない国の国民等の訴追に幾度も賛意を表してきながら、同盟国であるイスラエルや自国の国民等の訴追に際しては管轄権を持ち出して反ICCキャンペーンを行ってきた経過からすれば、ICCの作用を担う者に対する制裁により司法判断を心理的に萎縮させ、歪曲させることが目的であるというほかない。司法の独立性を破壊する不当な介入であり、国際的な法秩序を危険にさらすものである。こうした事態に対し、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、制裁は撤回されるべきであると表明し、欧州連合(EU)やその加盟国も、相次いでアメリカの措置を批判した。ICC自身も、制裁が公正な司法機関の独立性に対する攻撃であるとして批判した。国際社会からは、アメリカを名指しした批判が相次いた。

 ところが、日本の高市首相は、「大変残念」と述べるにとどまり、アメリカ政府に対する抗議も、制裁の撤回要求もしなかった。日本は、ICCの予算の最大の拠出国であり、他国の信任を得て赤根所長を送り出した国である。また、高市首相は、本年1月7日に赤根所長の表敬を受けた際、日本政府としてICC及び同所長を力強く支援していく旨を明言していた。にもかかわらず、自らの発言を反故にするように、アメリカに対して抑制的な態度しか示さなかった。

 当会は、職務を誠実に遂行したがゆえに制裁の対象とされた赤根智子所長及びアブドゥライェ・セエ氏に、連帯の意思を表明する。そして、アメリカ政府に対して、本件制裁のみならず、これまでにICCの裁判官・検察官らに科されてきたアメリカの制裁措置の全てについて、その即時かつ無条件の撤回及び反ICCキャンペーンの中止を求める。日本政府に対しては、アメリカに対して明確な抗議と即時撤回の要求を行い、これを内外に表明すること、他の締約国と共同して国際法秩序の維持に努めること、赤根所長を始めとする制裁対象者がその職務を継続しうるよう実効的な支援を講じることを強く求める。当会は、世界平和と人権を守るため、引き続き奮闘することをここに宣言する。

2026年8月29日
民主法律協会 第71回定期総会

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