声明・アピール・決議
日朝首脳会談・平壌宣言に関する声明
  1. さる9月17日、小泉首相が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日国防委員長(朝鮮労働党総書記)と会談し、日朝共同宣言が交わされ、国交正常化交渉を再開する合意がなされた。
  2. 今回の共同宣言では、日本側は、過去の植民地支配について、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたとし、「痛切な反省と心からのおわびの気持ち」を表明し、補償問題については、双方が財産請求権を放棄する代わりに日本側が経済協力を約束した。そして、この会談のなかで、北朝鮮側から、多数の日本人を国家機関の一部が拉致したこと、5人が生存し、8人が死亡したいう衝撃的な事実が伝えられ、これについて謝罪する旨の言及があり、併せて北朝鮮側は、核問題の包括的解決のために、関連の国際的合意を遵守すること、ミサイル発射実験の無期限延期することを表明することなどが盛り込まれた。
     北朝鮮は、戦前の侵略戦争と植民地支配によって日本が被害を与えた国々のなかで、その清算がまったく未解決のまま残っている唯一の国である。言うまでもなく、日本がアジア諸国から信頼される友好関係を築くうえで「植民地支配の過去」を謝罪し、清算することは、根本的に必要な事柄である。今回日本政府が、1998年の日韓共同宣言にならうかたちで植民地支配に対する謝罪を行い、また、日韓国交正常化にならうかたちではあるが補償問題に合意がなされたことは、「過去」の清算に向けて第一歩となるものである。
     また、北朝鮮は、これまで、その核開発疑惑、日本上空を通過するミサイル実験、日本近海の不審船問題などで、日本安全保障の「脅威」とされ、ブッシュ米大統領からイラク、イランと並んで「悪の枢軸」と呼ばわりされてきた国である。その意味で今回の共同宣言は、北東アジア地域、さらには、世界全体の緊張緩和と安定につながるものである。
  3. 他方、いわゆる拉致問題は、自らの意思に反して北朝鮮に連れ去られ、帰国できなかった被害者や、その帰りを長年にわたり待ちわびていた家族の心情・無念さを思うとまことに心痛にたえない。言うまでもなく、他国の国民をゆえなく自国に拉致することは、国家主権を侵害し、基本的人権と人道に反する重大な犯罪行為である。
     協会としては、国民の生命と身体の自由を脅かす国家的テロ行為とも言える犯罪に対して強い憤りと抗議の意思を表明するものである。
     そして、これまで拉致問題の解決を長引かせた日本政府の姿勢も問題にされなければならない。今後、政府は、日朝国交正常化交渉のなかで北朝鮮に対して、徹底的に全容解明を求めるとともに、被害者への謝罪と補償など誠意ある対応を求めるべきである。
  4. 協会は、今回の共同宣言に基づく日朝国交正常化交渉の再開は、日本の「過去」の清算と北朝鮮の核、ミサイル、不審船問題などが平和的に解決されるスタートになるものであり、この日朝の対話を前進させるべきであり、拉致問題をセンセーショナルに取り扱ってこれを後退させてはならないと考える。
     また、現在継続審議となっている「有事法制」は、今回の日朝共同宣言の精神や、国際紛争を平和的解決に解決することをうたった日本国憲法とは相容れないものであり、廃案にされることを強く求めるものである。
2002年10月10日
                           民主法律協会
   
 
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