声明・アピール・決議
 橋下知事による府民いじめの大阪府政「改革」を撤回し、
   府民の暮らしを守る府政への転換を求める決議


  1. 府民に犠牲を強いる「改革」の撤回を求める
     2008年1月に初当選した橋下徹・大阪府知事は、府民に犠牲を強いる“改革”をすすめている。
     雇用・労働分野では、大阪府立労働センターでの正規雇用紹介事業費や、障害者・高齢者の就職支援事業費が削減された。また、大阪府労働情報総合プラザは本年7月末で廃止され、労働運動や裁判闘争に活用できる貴重な資料群が散逸の危機にある。府職員の人件費も大幅削減された。約350名の教務事務補助員を解雇(雇い止め)する計画もある。
     教育現場では、私学助成や教職員人件費が削減されたほか、個別の生徒に対応するための「いじめ・不登校対策事業費」や「スクールカウンセラー配置費用」も縮小された。その一方で、教育現場に格差と競争を持ち込む習熟度別教育の推進費用9億6千万円や、放課後の進学指導(大阪版「夜スペ」)の事業費3千2百万円が今年度予算で初めて計上された。少数のエリートと多数の落ちこぼれを生みだす教育政策であることは明白である。
     児童・母子家庭・障害者に対する各種施策も大幅に削減・縮小され、4種類(老人、障害者、乳幼児、一人親家庭)の医療費助成の廃止も検討中である。府立国際児童文学館や青少年会館など、府民の財産というべき施設も次々に廃止されようとしている。
     わたしたち民主法律協会は、府民に重大な犠牲を強いる“改革”路線を直ちに撤回するよう求めるとともに、大阪府が「住民の暮らしを守る」という地方自治の原点に立ち返るよう強く求めるものである。

  2. 民主主義に反する政治手法は許されない
     橋下知事の“改革”路線は、「自立」や「自己責任」という言葉を強調することにより住民奉仕という行政の責務を放棄し、福祉・教育・文化を切り捨てるものである。
     その一方で橋下知事は財界の要望には忠実であり、府民が望まない大型開発プロジェクトや大企業優遇措置は継続される。安威川ダム・槇尾川ダム、阪神高速大和川線、箕面の山林開発、第二名神道路などには今後も巨額の事業費が投入される。企業誘致や先端技術支援の名目で特定企業に対して支出される府予算額は年間44億円(昨年度より16億円増)にのぼる。財界主導の「ミュージアム構想」や「イルミネーション」にも巨額が投じられる。府民生活を犠牲にしても、財界の利益だけは「聖域」とする姿勢である。
     橋下知事の政治姿勢にも重大な問題がある。橋下知事は、「大阪府が夕張のようになってしまう」などと府民に危機感を植え付けることにより改革を強行しようとしている。しかし、減債基金・借換債などの活用や大型開発の見直しによって、府民の暮らしを守りつつ財政再建を果たすことは十分可能である。大阪府の内部資料ですら、府が夕張市のように財政再建団体になる可能性があるという試算は存在しない。府民に根拠のない不安を植えつける政治手法は極めて不当である。
     また、橋下知事が反民主主義的な言動を繰り返している点も重大な問題である。府職員に対して「文句がある人は辞めてください」と恫喝したり、市民や学者らの発言に対して「しょうもない意見」と侮辱したうえ、「私は180万人に支持されているのだから」と繰り返し強調して反対意見を封じ込めようとしている。こうした言動は、およそ多様な意見に耳を傾けて民主的かつ建設的な議論をしようという姿勢ではない。たとえ多数の得票を得た知事であっても、有権者から白紙委任を受けた訳ではない。重要な意思決定については府民の声に耳を傾けて、意見交換や議論を十分に尽くすべきである。選挙に勝ったのだから何をしてもよいとか、少数派の意見に耳を貸す必要はないというのは、民主政治の原則から大きく逸脱している。
     府議会の審議では、福祉切捨てへの反対意見を述べた府議会議員に対し、「言いたいことがあったら多数派を取ってからにしてください。」との暴言を吐き、議会制民主主義そのものへの無知・無理解と傲慢さを自ら暴露した。このような反民主主義的な発言を許すことはできない。
     さらに、橋下知事の表面的な言動だけでなく、この“改革”の本質的な危険性も指摘しなければならない。それは、この“改革”が「新自由主義」と軌を一にしているという点である。すなわち、規制緩和の名のもとに雇用のルール破壊や社会保障の切り捨てなどをすすめ、社会のすみずみに競争・格差・弱肉強食を横行させる新自由主義路線(構造改革路線)が、橋下府政の本質である。そこでは社会福祉行政を放棄した「小さな政府」が財界本位の政治をすすめればよいとされる。橋下知事が「大阪府の解消」や「道州制」を掲げるのは、そうした政治観に基づくものである。
     わたしたち民主法律協会は、根拠のない不安を府民に植え付けることにより府民に痛みを押し付ける政治手法を改め、民主的な府政運営を行うよう求める。そして、橋下知事の改革路線は、府民にいっそうの競争や格差をもたらし深刻な事態を招くことは必至であり、一刻も早く撤回・是正されるよう強く求める。

  3. 府民の暮らしを守る府政への転換を
     橋下知事が掲げる“改革”に対して、広範な府民や団体から批判があがっている。
     2008年4月から7月の間に大阪府に提出された要請署名は、各団体・各分野のものを合わせて300万筆以上にのぼった。府が6月13日から7月14日まで募集したパブリックコメントには、総数5千件以上の声が寄せられ、改革案への反対が賛成を大きく上回った。
     府民の批判を受けて、橋下知事の“改革”路線は一定の修正を余儀なくされている。たとえば、今年6月に発表された「大阪維新プログラム(案)」では35人学級の廃止が見送られたり、7月に成立した今年度予算では私学助成の削減が緩和されるなど一定の修正がなされた。これは府民のたたかいの成果であるが、まだ府民の切実な願いからほど遠いものとなっている。今後も、府民の声を結集して悪政を阻止していく運動が求められる。
     わたしたち民主法律協会は、広範な府民とともに、府民の暮らしを守る府政への転換を求めて運動を広げる決意である。

      

2008年8月30日
 民主法律協会第53回定期総会
   
 
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