声明・アピール・決議
 労働者派遣法の抜本的改正を求める決議


  1.  派遣・偽装請負(個人請負を含む)など間接雇用は、格差と貧困を生み出す大きな要因となっている。間接雇用労働者は、使い勝手のよい労働力として、労働分野の底辺に位置づけられ、その非人間的な就労実態と低賃金などの労働条件のため、文化的な生活はおろか、健康や生命さえ脅かされる状況にある。これらの状況は、虐げられた労働者の勇気ある告発、違法行為の是正を求める粘り強い闘い、その闘いを支援する運動を通じて社会的に暴露され、その状況の打開をめざす闘いは、今や労働者派遣法を抜本的に改正しなければならないという大きな運動へと発展してきている。
     今年4月には、各野党が派遣法の改正に関する意見を発表し、6月には、政府・与党も日雇い派遣の原則禁止など一定の項目について規制する旨を言明せざるを得ない状況に追い込まれている。ただ、一方で、7月28日に発表された、厚生労働省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」報告では、一定の規制を口にしながらも、同時に、いわゆる専門業種に関する雇い入れ申込み義務の撤廃や、いわゆる常用型派遣の場合の事前面接の解禁が提案されるなど、常用代替は許されないとする派遣法の趣旨に重大な変質を加える方向性も示されている。
    7月30日から労働政策審議会が開催されているが、使用者側からの巻き返しも強く、派遣労働は「労働者のために必要」とする俗論がマスコミなどで流布されるなど、厳しいせめぎ合いが続いている。

  2.  このように、労働者派遣法の改正をめぐる問題は、現在の格差と貧困をめぐる問題状況を代表する中心的対決点となっており、また、労働者・市民の側の要求と、政府・財界の側の要求とが真っ向から激しくぶつかり合う政治的対決点となっている。
     当協会は、労働者派遣法が労働者の生活と権利を破壊する法制であることを、その制定前から明らかにし、その制定に反対する運動を展開してきた。また、具体的な事案の告発及び是正を求める運動を全国に先駆けて先進的に取り組んできた。今こそ、その運動を法改正という形で結実させるため、協会を挙げて取り組みを強めることが必要となっている。
     当協会は、派遣労働が、直接雇用の原則に反する雇用形態であることに改めて注意を喚起するとともに、仮に派遣労働を例外として認める場合であっても、少なくとも、派遣対象業務の専門業務への限定、登録型派遣の廃止、みなし直接雇用規定の導入、派遣先労働者との均等待遇、派遣先の団交応諾義務の明文化などを盛り込んだ労働者派遣法改正を行うよう求める。
     そして、この派遣法改正を実現させるため、野党に対して、野党間の協議を労働者保護の立場から十分に行うこと、野党の案には少なくとも前記の改正点を盛り込むことを求めるとともに、当協会としては、@全国の運動・団体と連帯して派遣労働者の現状告発とその是正を求めるたたかいを強めること、A派遣法の仕組みと問題点、改正の焦点を広く伝えること、B派遣労働は労働者のためでもあるという俗論を徹底して批判するとともに、対案を提示し、解決の道筋を示すこと、C政府・政党への要請行動などの働きかけを行うこと、を運動の柱にして、たたかいを大きく展開して行くことを表明する。

  以上のとおり、決議する。

2008年8月30日
 民主法律協会第53回定期総会
   
 
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