声明・アピール・決議
私たちは有事法制を許さない
政府は4月17日、有事法制3法案を国会に提出し、5月7日から衆議院特別委員会において審議が始まった。
 しかし、この有事3法案は、審議をすればするほど、憲法を否定し、日本を戦争へ導くものであることが明らかとなってきた。
 有事法制が発動される「武力攻撃事態」は、「武力攻撃のおそれ」や「武力攻撃が予測されるに至った事態」も含む、曖昧かつ広範な概念であり、周辺事態法にいう「周辺事態」との違いも明らかではない。しかも、その判断は首相と、実質的には米軍・自衛隊に委ねられる。アメリカ政府が「ならず者国家」や「悪の枢軸」などと決めつけた国との緊張状態を高め、「周辺事態」として日本が米軍の後方支援を行う段階となれば、日本もこれらの国々からは敵国とみなされうる。それを日米政府レベルで「武力攻撃事態」と認定して、自衛隊出動や米軍への兵站活動(物品、施設、サービス供与)などを内容とする「対処基本方針」が開始されることになる。「対処基本方針」に国会が関与するのはその開始後であり、実際問題として、これらは後追いにしかならず、国会の最高機関性を空洞化するものである。
 そしてひとたび有事法制が発動されるや、自衛隊の行動はあらゆるものに優先され、陣地の構築や部隊の移動に障害となる規制は、それが国民の人権保障のためのものであっても、ことごとく外される。地域住民の生活保障の見地から定められている建築、港湾、墓地埋葬その他における地方自治体の権限も否定される。
 そして、国のあらゆる機関や地方自治体はもちろんのこと、日本銀行、日本赤十字、NHK・民放などの報道機関、通信機関、JRなどの輸送機関等が、指定公共機関として戦争協力義務を負わされる。内閣総理大臣は、民間を含むこれらの地方自治体や公共機関に対し、対処措置につき指示し、あるいは直接実施できる。さらには一般市民も協力義務を負わされる。医療、土木、運輸業に従事する労働者への従事命令や、メーカー・流通・小売業者等への物資保管命令が発令され、物資保管命令違反には罰則すら課される。米軍の活動については、市民は何も知らされないまま、協力だけさせられるのである。ちなみに、戦前の国家総動員法は、発動要件を「戦時」に限っていたが、今回の有事法制発動要件はきわめてゆるやかであり、いっそうひどいものである。
 そもそも、今日、わが国が他国から侵略を受ける可能性はない。他方で、アメリカにとっては、世界戦略を展開し、必要に応じて他国を攻撃する際に、日本から後方支援という名の兵站活動を受ける必要性は高い。だからこそ、アメリカは日本に執拗に有事法制制定を求めているのである。「備えあれば憂いなし」ではなく、「備えあれば戦争ができる」のである。
 日本国憲法は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」(日本国憲法前文)。日本国憲法ができて半世紀余りの間、これまで日本の関与によって他国民の一人の生命も失われなかったことは、私たちの誇りである。しかし、この有事法制は、この誇りを傷つけようとしているのである。
 私たちは、日本国憲法をことごとく蹂躙し、アメリカに迎合してその戦争に協力するための有事法制に断固として反対するものである。
2002年5月16日
       「ストップ!戦争遂行法−有事3法案に反対する市民集会」参加者一同
   
 
← BACK TOP↑