声明・アピール・決議
憲法違反の有事法制に反対する法律家団体共同アピール
 政府は4月17日、有事法制3法案を国会に提出した。これはわが国が決して踏み越えてはならない一線を踏み越えようとするものである。
 今回の有事法制案は、わが国が他国に攻撃される可能性がほとんどゼロとされている今日、わが国の国土と国民を守るためのものではなく、自国の権益確保のために他国に対して平気で武力を行使するアメリカの世界戦略に迎合し、アメリカとともに戦争を始めるための法整備にほかならない。それは、「武力攻撃事態」への「対処措置」に米軍への物品、施設または役務の提供が明記されていることからも明らかである。
 そもそも、「武力攻撃事態法」という法案の名称自体が国民を欺くものである。法案にいう「武力攻撃事態」には、「武力攻撃のおそれのある場合」、「武力攻撃が予測されるに至った事態」までもが含まれるなど、概念がきわめて広い。昨年の9.11テロ事件以後、アメリカの報復戦争に真っ先に賛成したわが国が報復テロを受けるのではないかとの懸念が広がったが、このような場合までが「武力攻撃が予測されるに至った事態」とされるおそれもある。このように「武力攻撃事態」という概念を広げているのは、この法案が、わが国が他国から侵略された場合というよりは、むしろ、わが国が、アメリカとともに、他国に積極的に軍事力行使を行うような場合を想定しているからである。
 この「武力攻撃事態」の認定は内閣総理大臣に委ねられ、「自衛隊法改正案」は、自衛隊の防衛出動の要件としての国会承認を事後承認に変えて、民主的コントロールが後退させられている。
 そして、「武力攻撃事態法案」では、国民の基本的人権を著しく制限しようとする。すなわち、有事における国民の一般的な協力義務を明記し、日本銀行、日本赤十字社、NHK、その他医療、電気、ガス、輸送、通信などの指定公共機関に対して必要な措置を実施する責務を課している。「自衛隊法改正案」では、取扱い物資の保管命令に違反した場合には罰則を課すとしているが、この保管命令は、「戦時」に限定していた戦前の国家総動員法よりも緩やかな要件のもとに発令されるものである。まさに戦争に反対する行動を抑圧し、刑罰の脅しで国民に戦争に協力させるものである。
 さらに、内閣総理大臣に地方公共団体の長に対する強力な指示、さらには代執行の権限を与えているが、これは地方自治の抹殺である。
 日本国憲法は、国際紛争を解決する手段としてのあらゆる武力行使を永久に放棄している。有事法制は、憲法前文、9条、人権規定、地方自治など、日本国憲法のすべてを否定するものであり、到底許されないものといわざるをえない。
 私たちは、日本国憲法をことごとく蹂躙し、アメリカに迎合して世界中の貧しい国への武力行使を行うための有事法制に断固として反対するものである。
2002年4月23日
大阪社会文化法律センター
  大阪労働者弁護団
  国際法律家協会関西支部
自由法曹団大阪支部
     青年法律家協会大阪支部
  民主法律協会
   
 
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