声明・アピール・決議
共謀罪の創設に反対する決議
  1.  政府は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」の批准のために国内法整備が必要であるということで、「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」を国会に提出した。その中で、団体活動を対象とする共謀罪を新設しようとしている。組織的な犯罪の共謀罪は、死刑または無期もしくは長期4年以上の懲役もしくは禁固の刑が定められている「罪に当たる行為で、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者」を処罰するとし、(法案第6条の2)、この対象犯罪の罪名は、逮捕監禁、強要、恐喝など560を越えている。

  2.  しかし、この共謀罪の創設は極めて危険である。
     共謀罪は共謀したことだけで処罰の対象とするもので、行為主義を原則とする我国の刑法の原則とは両立しないばかりか、その処罰範囲は大幅に広がることとなる。
     また、共謀罪は団体間の意思の連絡を処罰するものであるから、意思の連絡の手段方法が捜査の対象ということになる。つまり、電話、FAX、電子メール、室内での会話が捜査の対象となる。そのため、捜査当局の捜査方法は盗聴または潜入活動(スパイ活動)にたよることになり、今後、盗聴法の一層の拡大を求めてくることは明らかである。そうなれば、捜査当局による労働組合、市民団体、NGO、政党などの活動に対する監視が著しく強化されることとなる。
     労働組合活動においては、争議解決のために親会社・持株会社・取引先等に要請行動を行い面会を求める決議をした場合、強要罪の共謀罪に該当するなど、執行委員会や三役会議などにおける集団的討議が共謀行為にあたるとして捜査の対象とされかねない。その上、労働組合やその活動を嫌悪する使用者が、労働組合もしくは労働組合の組合員が犯罪を行ったとして告訴、告発し、この共謀罪を利用して組合活動を妨害することが十分に考えられる。これでは、憲法上保障された労働基本権(団結権・団体交渉権・争議権)は空文となり、労働組合活動は圧殺されることになる。

  3.  民主法律家協会としては、この共謀罪の法案の危険性を主張し、法案の成立を断固として反対する。

2003年8月30日
                         民主法律協会 第48回定期総会
   
 
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