声明・アピール・決議
労働法制の改悪に抗議し、解雇規制ルールについて適正な運用を求める決議
 2003年通常国会で、労働基準法、労働者派遣法及び職業安定法が改悪された。我々民主法律協会並びに多くの労働者の強い反対の声を無視して、労働基準法については与党3党と民主党・自由党の、労働者派遣法・職業安定法については与党3党のみの賛成によって改悪が強行された。
 今回の労働法制改悪は、労働法制におけるよりいっそうの規制緩和によって「労働力の弾力化」をめざす財界の狙いが結実したものである。
 労働基準法に関しては、政府審議会で議論されていた「金銭解決ルール」について政府原案から削除させ、また、政府原案に盛り込まれていた「使用者は・・・労働者を解雇できる。」という解雇自由原則の規定については、労働組合や法律家団体などが一致して反対した結果、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と修正させることができた。これは、従来の判例法理で確立している解雇権濫用法理を明文化し、解雇規制ルールを明らかにしたという意味で一定の評価ができる。
 もっとも、従前原則1年であった有期雇用期間が原則3年に延長された結果、今後は、終身雇用労働者が有期雇用労働者へと置き換えられていき、また、有期雇用労働者については契約更新をせずに3年で使い捨てにされていくことが予想される。このような事態は身分の不安定な労働者を増加させるとともに、事実上の若年定年制として機能することが強く危惧される。
 また、裁量労働制の導入要件を大幅に緩和して、不払いサービス残業を合法化する抜け道がつくられた。これについては、「サービス残業隠しに悪用されることのないよう」という附帯決議がなされており、これを踏まえて不払い残業を撲滅するための厳格な「基準」をすみやかに提起することを求める。
 労働者派遣法に関しては、26業務についての派遣期間制限を撤廃し、一般派遣業務についての期間制限も従前1年から3年に延長されるなど、派遣労働が一時的・臨時的労働であるという大前提が放棄され、さらには製造業や医業など従前は派遣労働の弊害が大きいために禁止されていた業務についても派遣導入を解禁した。
 職業安定法に関しては、職業紹介事業の許可手続きを一層規制緩和し、本来、国民の勤労権を保障するために国家が責任をもって職業紹介を行うべきものを、営利目的の民間企業にゆだねる方向を強化しようとしている。
 民主法律協会は、今回の労働法制「改悪」に断固抗議するとともに、解雇規制ルールの運用にあたっては両院の附帯決議にあるように解雇権濫用の評価の前提となる事実については使用者側に主張立証責任があることの周知徹底を図り、判例上の整理解雇4要件についても周知徹底することを強く求める。
2003年8月30日
                         民主法律協会 第48回定期総会
   
 
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