声明・アピール・決議
米英の対イラク戦争開始および日本政府の支持に対する抗議声明
 
  1.  ブッシュアメリカ大統領は、平成15年3月18日、イラク問題での国連安保理協議を打ち切り、48時間以内にイラクフセイン大統領が亡命しなければ、大量破壊兵器の完全廃棄と政権打倒のために武力行使を開始するとの最後通告を行い、本日開戦した。そして、小泉首相は、直ちにアメリカ支持を表明し、新たな国連安保理決議がなくても、これまでの決議1441等で武力行使は認められるとの見解を示した。

  2.  ブッシュ大統領の最後通告は、国連査察団が今後一定期間査察を継続・強化により成果があがるとし、国連加盟の大多数の国が査察による平和的解決を求めているにもかかわらず、その途を閉ざし、戦争に突入した。
      しかし、国連の新決議なしでのイラク攻撃は国連憲章と国際法に明白に違反する。国連憲章は、20世紀の2度にわたる世界大戦の教訓に立ち、加盟各国の主権の尊重と、伝統的に認められてきた個々の国家の戦争の自由を否定し国際関係における武力の行使と武力による威嚇を禁止した。そして、例外的に武力行使が認められる場合は、武力攻撃を受けた場合の自衛権行使(51条)と平和に対する脅威や侵略行為にに対する集団的措置として安全保障理事会の決定による措置(42条)の場合に限定される。しかるに、今、米国が行おうとしているのは、米国への武力攻撃を行っていないイラクに対する「先制攻撃」であり、およそ、自衛権の行使の範疇に含まれないものである。また、安保理決議1441は、イラクの大量破壊兵器解体に関する国際的合意であり、イラクに対する自動的な武力行使までをも認めたものではないし、主権国家の政権打倒のための攻撃は、各国の主権尊重を世界平和のルールのひとつとする国連憲章の精神とは相容れないものである。
     さらに、小泉首相が真っ先にアメリカの戦争計画に支持を表明したことは、日本国憲法9条の「国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」と誓った精神に真っ向から反している。

  3.  今回、イラク攻撃で、死傷者は50万人、1000万人に食料援助が必要とされるなど、湾岸戦争を上回る深刻な被害が予想されている。イラクの多くの子どもたちが、現在でも湾岸戦争当時にアメリカが投下した劣化ウラン弾の影響と思われる後遺症に苦しんでいる。今また、国際法に違反した無法な戦争で、無辜の市民や子どもたちの命が奪われ、傷つけられることは、断じて許すことができない。

  4. 民主法律協会は、米英の対イラク戦争開始及び日本政府のこれに対する支持に断固抗議するとともに、日本政府のイラク攻撃支持の姿勢を撤回することを強く求めるものである。
2003年3月20日
                           民主法律協会
 会長 小林つとむ
   
 
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