声明・アピール・決議
個人情報保護法案等の廃案を求める決議
 政府与党は、先の臨時国会において廃案となった個人情報保護法案に若干の修正を加えて今国会における成立をねらっている。
 この修正は、報道の定義を定め、報道機関には個人を含むこと、報道機関等への情報提供者に対し主務大臣が関与しないこと、及び著述を業として行う者についても適用除外とすることを明記することにより、マスコミや報道関係者からの批判をかわそうとするものである。
 しかしながら、このような小手先の修正は法案の本質的な問題点をなんら解決するものではない。修正法案においても適用除外とされる報道に該当するか否かについては政府が決定するとの点については旧法案となんら変わりはない。また、国家が個人情報保護という名目で、労働組合、民主団体、法律家団体等を含むあらゆる個人情報取扱事業者に対して情報規制を行うという法案の基本的性質についてなんら変わっていない。また個人情報取扱事業者には、先の国会で廃案になった法案と同様に、様々な義務が課せられ、規制機関として公安委員会等の行政機関が予定されている。従って今回の修正個人情報保護法案によっても、国家による個人情報の管理、情報統制、言論統制を招くことについては先の国会で廃案となった法案と同様と言わざるをえない。
 他方、政府与党は同じく先の臨時国会において廃案になった行政機関個人情報保護法の全面改正案についても、若干の修正を加えた上で、今国会における成立をねらっている。この修正は、行政機関の職員を対象とした罰則規定をもうけることにより批判をかわそうというものである。しかしながら、このような修正によっても、行政機関による個人情報収集に関する制限はなく、個人情報の取り扱いについては行政機関の判断に任され、チェック体制がないという根本的な問題点については何ら解決がなされていない。これでは、行政機関の有する個人情報の保護としては不十分というほかない。
 また、人権擁護法案についても、政府は、メディアに対する規制については凍結し、3年後に見直す旨の修正をなすことにより成立をねらっている。しかしながら、この修正によっても、「人権侵害」の定義を「差別」等に矮小化した上で、「人権侵害」の有無を国家機関たる法務局の外局である人権擁護委員会が判断し、「人権侵害」行為の停止等の勧告をしたり、一定の場合には、罰則による強制力をもって関係者に対する出頭や陳述を命じたり、文書等の提出を求めたり、立入検査をしたりすることができるという根本的な問題点は残されたままである。
 以上のように、修正後の個人情報保護法案及び人権擁護法案によっても、いずれも「個人情報保護」や「人権擁護」という美名のもと、本来人権侵害の主体として認識されるべき国家権力を人権擁護の主体という誤った位置づけを行い、刑罰による威嚇を背景に情報を管理しようという姿勢にはなんらの変わりはない。
 よって、私たちは、個人情報保護法案及び人権擁護法案の廃案を求めるとともに、行政機関の保有する個人情報保護法案の抜本的見直し、並びに個人情報保護法制の整備を前提とした住基ネットの速やかな稼働停止を求めるものである。

以上、決議する。
2003年2月16日
                           民主法律協会
 2003年権利討論集会
   
 
← BACK TOP↑