声明・アピール・決議
弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入国内取引への新仲裁制度の導入に反対する決議
 現在、司法制度改革が議論されている。それは、国民、とりわけ経済的・社会的弱者にとって「開かれた司法」になるものでなければならない。
 しかるに、司法改革推進本部は、敗訴者負担制度、新仲裁制度の導入をうちだしている。かかる制度は、司法を「人権の最後の砦」から強者のための司法に変貌させ、国民の裁判を受ける権利を奪うものとして、極めて重大な問題である。

 弁護士報酬の敗訴者負担制度が導入されると、裁判で負けた方が相手方の弁護士費用までも払わされることになる。
 労働事件において、解雇、労働条件切下げ、賃金差別等に対して労働者が司法による救済を求めようとしても、証拠のほとんどを使用者が握っており、力においても圧倒的な差がある中で、現在でも労働者は困難な訴訟を強いられている。もし、敗訴者負担制度が導入されれば、労働者は使用者側弁護士の費用まで負担させられる心配をすることになり、経済的弱者である労働者は裁判をあきらめざるを得なくなるだろう。
 結局、この制度は、経済的・社会的弱者に、裁判による解決を萎縮させ、権利の実現の場を奪っていくことになる。

 仲裁制度は、もともと、国際商取引など対等な力関係にある当事者間における迅速な紛争解決を目的として導入が検討されてきたものである。しかし、仲裁制度の国内取引への導入は、社会的弱者の権利がないがしろにされる危険が大きい。
 例えば、この制度が労働契約に導入されると、契約書や就業規則に、「労使間のトラブルは××仲裁機関による。」という条項を入れておくことにより、労働者が雇用される時点でほぼ自動的に仲裁合意を結ぶことになる。仮に個別に仲裁合意をすることを義務づけたとしても、労働者が拒むことは事実上不可能であるから、結果は同じことになるだろう。
 一度仲裁合意が結ばれると、たとえ解雇,配転、賃金切下げなどの問題が起こっても、労働者はこれを争うために裁判所を利用することはできず、使用者によって選定された仲裁機関によって、使用者に都合の良い判断がなされても、労働者は従わなければならなくなる。
 結局、この制度は、経済的・社会的弱者に、司法による救済の道を閉ざすことになる。

 弁護士報酬の敗訴者負担制度が,経済的な面から裁判を受ける権利を奪うものであるとすれば、新仲裁制度は、法制度の面から裁判を受ける権利を奪うものである。
 私たちは、憲法で保障された裁判を受ける権利を奪う、弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入、国内取引への新仲裁制度の適用に、断固反対する。
 
以上、決議する。
2003年2月16日
                           民主法律協会
 2003年権利討論集会
   
 
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