声明・アピール・決議
解雇自由化、不安定雇用拡大、サービス残業横行を許さない決議労働裁判改革を求める決議
 2003年通常国会で審議されようとしている労働基準法や労働者派遣事業法の見直しについては、「解雇ルールの明確化」とか「雇用の拡大につながる」といった肯定的な見方もなされているが、その実態は『解雇を原則自由化』し、『不安定雇用を拡大』し、あるいは『サービス残業を増大』させるという労働者の権利を蹂躙するものであって断固として許すことができない。

 解雇ルールの策定については、政府が検討している案では、解雇は原則として自由であるという点が強調される一方、解雇が無効となる場合はあくまでも例外にすぎないかのような表現となっている点で重大な問題がある。このような表現では、過去幾多の労働者の闘いの中で勝ち取られてきた解雇権濫用法理や整理解雇の四要件を後退させ、解雇を原則として自由化することになってしまうことが強く危惧される。また、解雇は原則として自由であると規定することにより、「正当な理由がないこと」の立証責任は労働者側に課せられることとなりかねない。違法不当な解雇であったとしても裁判上で「正当な理由がないこと」を労働者側が立証できない限りは解雇が認められてしまう結果となってしまうであろう。このことは、労使当事者間における証拠の偏在や圧倒的な経済力の格差からすれば、きわめて重大な問題である。
 さらに、昨年末に労働政策審議会が出した「建議」では、解雇が権利濫用であって無効と裁判所が判断した場合であっても、一定額の金銭の支払いをすることによって労働契約を終了させるという金銭解決の手段を導入しようとしていた。使用者側からの申立てによるこのような金銭賠償を認めれば、金さえ払えば理由を問わず自由に解雇できるという結果となってしまう。このような金銭賠償の手段を認めることは断固として許すことができない。

 また、有期雇用の上限を現行の1年から3年に延長すること、派遣労働期間を1年から3年に延長すること、製造業についても派遣を解禁することといった法改正が検討されているが、これら「改正」はいずれも雇用を拡大することにはつながらない。「改正」の真の狙いは、正規労働者を非正規・不安定労働者に置き換えることによって、労働者の賃金・権利を切り下げさらなる搾取を可能にするとともに、いつでもクビにできる「使い易い」労働者を増やそうとすることに他ならない。
 さらに、裁量労働制の要件を大幅に緩和する「改正」によって、ホワイトカラー全般に裁量労働制を適用して、不払い・サービス残業を強制できるようにすることが狙われている。

 私たちは、解雇を緩和・自由化し、非正規・不安定雇用を拡大し、不払い・サービス残業を合法化するといった法制には断固として反対するとともに、正当理由なき解雇は直ちに無効であることを明確にすること、不払い・サービス残業を根絶すること、労働者が安心して働くことができるように雇用の安定を図ること等を内容とする解雇規制法の制定と働くルールの確立を強く求めるものである。

以上、決議する。
2003年2月16日
                           民主法律協会
 2003年権利討論集会
   
 
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