声明・アピール・決議
労働裁判改革を求める決議
  1.  労働裁判は、今、危機的な状況にあるといってよい。
     まず、労働裁判の件数が圧倒的にすくないことである。平成13年の全国の地方裁判所の件数は本訴、仮処分を含めて3000件にすぎず、ドイツの労働裁判所の56万件、フランスの労働審判所の20万件と比較しても圧倒的にすくない。
     他方、現在のリストラのために労働相談件数が激増しており、労働局の相談件数は平成13年10月〜平成14年3月までで25万件、都道府県の労政事務所等の相談件数は平成12年度で15万件におよび、労働弁護団の110番でも2002年で2000件を超える相談が寄せられている。そして、これらの相談の具体的内容は、解雇や退職強要、賃金切り下げ、残業代不払い、いじめ、セクハラなど深刻なものばかりである。
     このように、多くの労働紛争があるにもかかわらず、大半の労働者が労働裁判を利用できず、いわば泣き寝入りをせざる得ない状況にあると言わざる得ない。
    また、労働裁判の内容も、東京地裁をはじめ整理解雇法理について、4要件ではなく総合判断の要素にすぎないとしたり、形式的な法文解釈に終始して労働実態や労働慣行を無視したりするするなど、官僚司法の限界を伺わせる判決が相次いでいる。
     今、求められている労働裁判改革の出発点は、泣き寝入りをせざる得なかった労働者に裁判を利用しやすくすること、そして、雇用社会に本当の意味で法の支配を及ぼすことにある。
  2.  ところで、司法制度改革審議会は、2001年6月12日の意見書のなかで「労働関係事件の総合的対応強化」を求め、その内容は、@審理期間の半減と法曹の専門性の強化、A雇用・労使関係の専門的知識・経験の有する者が関与する労働調停の導入、B労働委員会の救済命令の司法審査のあり方、労働参審制の導入の当否、労働事件固有の訴訟手続きの要否について検討することであり、現在、司法制度改革推進本部の事務局にもうけられた労働検討会で、上記課題についての検討が続いている。
     労働検討会のなかで最高裁は、迅速処理の成果を誇示する一方、労働参審制の根拠となる労働紛争の専門性や特殊性については、否定的な態度を示しており、官僚出身者で占めれる事務局主導で進めば、「労働裁判改革」として実施されるのは、労働調停の導入だけとなるおそれがある。
     しかし、これでは、多くの労働者が泣き寝入りをせざる得ない状況を改善することは到底できない。協会は、今、求められる労働裁判改革として、少なくとも、次の点を強く求めるものである。

    1. 増加する個別労働紛争処理の中心を労働裁判が担うべきであり、そのために費用や手続きの面で労働裁判へのアクセスを容易にするための改善を図ること。
    2. 裁判所の人的・物的設備の充実を図り、労働事件を担当する裁判官に労働法理、労働慣行、労働実態などについての十分な理解と素養を身につけさせること。
    3. 労使双方から選出された専門的知識・経験を有する者が、職業裁判官と対等の評決権を有する労働参審制を導入すること。
    以上、決議する。
2003年2月16日
                           民主法律協会
 2003年権利討論集会
   
 
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