声明・アピール・決議
宇治橋事件・堀越事件について無罪の判断を求める決議

  1.  東京高等裁判所において、2010年3月29日堀越事件につき判決がなされ、また、同年5月13日宇治橋事件につき判決がなされた。
     いずれも公務員が私的に政党のビラを配布したことが国家公務員法違反に当たるかが問われた事件であるが、これについて両事件の判断は対照的なものであった。

  2.  すなわち堀越事件判決は、憲法上の重要な権利である表現の自由の保障に配慮し、公務員のビラ配布行為が「公務の中立性」を害するか否かを個別具体的に検討した結果、本件罰則規定を適用することは、国家公務員の政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度を超えた制約を加え、これを処罰の対象とするものといわざるを得ないから、憲法21条1項及び31条に違反するとの適用違憲の判断を示し、被告人は無罪であるとした。
     これに対し、宇治橋事件判決は、猿払事件最高裁判決の判断を形式的に適用し、職務時間外、職場外で、かつ、公務員たる身分が外部からはうかがい知り得ない態様での政治的行為であっても規制されるべきであるとし、公務員が政治活動を行うことは全て公務の中立性を侵害すると言わんばかりの判断を行った上、被告人を有罪と断じた。
     
  3.  公務員が私的に特定政党を支持する政治ビラを配布する行為に対して刑事訴追を行うことは、政治的表現の自由を不当に弾圧する行為であって、憲法21条1項を侵害する許されない行為である。堀越事件判決は、公務員の政治的活動の自由を保障する方向での判断を示したものであるのに対し、宇治橋事件判決は、これを著しく軽視した不当な判決であると言わざるを得ない。

  4.  宇治橋・堀越両事件は、現在いずれも上告中である。最高裁がかつてなした猿払事件判決は、もはや時代遅れの産物となっており、表現の自由を保障した新たな判断がなされるべき時が来ている。
     民主法律協会は、最高裁が、「憲法の番人」としての役割を果たし、宇治橋・堀越両事件について、表現の自由を十分に保障する判断を示し、両事件について被告人を無罪とすべきことを強く求める。

2010年8月28日
民主法律協会第55回定期総会
   
 
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