声明・アピール・決議
「衆議院比例定数削減」に反対する決議

  1.  民主党は、先の参議院選挙に向けたマニフェストに衆議院比例代表制の議員定数を現在の180議席から80議席削減するとの政策を掲げた。現在も秋の臨時国会に法案を提出し、成立を目指すとの姿勢が報道されている。また、野党の側でも自民党、みんなの党等が議員定数削減を参議院選挙の公約としており、この問題は重大な局面を迎えている。

  2.  そもそも国会議員は、国民の多様な要求を政治に反映させる役割を担っているものであり、相当な議員数の確保は民主主義を実現するため絶対に必要なものである。この点、日本の国会議員数は、イタリア・イギリス・フランス・ドイツ等西欧諸国に比しても少ないのであり、議員定数削減は行われるべきでない。
     また、比例代表選挙制度は、多様な民意を議席数に正しく反映できる優れた制度であるにもかかわらず、この制度での当選議員を削減し、多くの死票を生む小選挙区制度での当選議員の比率を上げることは、少数意見の切り捨て、中小政党の国会からの排除につながるものである。
     実際、比例定数を80削減された場合を2009年の総選挙の選挙結果で試算した場合、公明党・共産党・社民党・みんなの党・国民新党・新党日本の6つの党の比例部分の得票率が30.9%であるにもかかわらず、全体の8%の議席しか得られないことになり、一方、民主党は42.4%の得票率で68.5%の議席を得ることになる。ここに民主党の政策の真のねらいがある。

  3.  民主党は、衆議院の比例定数を削減する根拠として、国会議員が自ら血を流して「ムダ」を削減すべきという点を挙げている。しかし、前述のように、相当な議員数とそのための必要経費はムダではなく、民主主義を維持するために必要不可欠なものである。議員にかかる個々の経費額を見直す余地があるとしても、議員数そのものを削減すべきではない。
     また、現在、共産党を除く政党に対しては、毎年約320億円もの政党助成金が国の税金から交付されているが、政党はその政策を支持する個人の支援によって運営されるべきものであり、この拠出こそ、国民の思想信条の自由にも反する不当で「ムダ」な支出として廃止されるべきである。民主党が政党助成金について口を閉ざしているのは、真のねらいが「ムダ」の削減にはないことを示している。
     
  4.  民主党や自民党の狙いは、少ない得票率でも多数の議席を得ることのできる選挙制度に改変しようとする点にあり、これによって国民の中に根強い反対のある消費税増税や憲法9条の改悪など重大な諸施策を断行しようとする点にある。
     民主法律協会は、比例定数削減反対の一致点での広範な運動を広げ、このような党利党略的な暴挙を阻止する決意を表明する。

2010年8月28日
民主法律協会第55回定期総会
   
 
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