声明・アピール・決議
労働者の雇用安定と均等待遇実現のための
有期労働契約規制を求める決議

  1.  有期契約労働者は、仕事が恒常的にあるにもかかわらず、3か月や6か月などの短期間の契約期間で更新が繰り返され、使用者側の都合で雇い止めされている。解雇規制を免れるために有期労働契約が脱法的に利用されているのが実態である。
     また、有期契約労働者は、雇止めの威嚇のもと、劣悪な労働条件で働くことを余儀なくされている。すなわち、労働者としての当然の権利さえ行使できず、過重労働を強いられ、また、契約更新時には一方的な労働条件切り下げが行われても文句が言えないという事態が広がっている。
     派遣労働者が、派遣先への直接雇用を求める運動をしこれが実現しても、派遣先は有期労働契約を活用し、短期間で企業外に放逐するということを平然と行っている。
     有期労働契約は、公務・民間を問わず増加の一途をたどっているが、このような低賃金で無権利の有期契約労働者の増加によって、正規労働者の賃金や労働条件も切り下げられ、雇用不安と「ワーキングプア」の問題はますます深刻化している。
     有期労働契約に対する法規制の検討が喫緊の課題とされる所以である。
     
  2.  EU諸国をはじめとする多くの先進諸国では、客観的に合理的な理由がなければ有期労働契約の締結自体が禁止され、あるいは有期労働契約の継続期間の上限や更新回数の上限が設定され、その規制に反する契約については無期契約とみなす制度がとられるとともに、無期契約労働者との均等待遇のための法規制が行われている。
     ところが我が国には、有期労働契約の期間の上限規制があるのみで、有期労働契約の利用自体や継続期間を規制する明文の法律は存在しない。また、有期契約であることを理由とする差別禁止規制も存在しない。
     この問題について、厚生労働省は「有期労働契約研究会」を立ち上げ、本年3月、「中間とりまとめ」を発表した。しかし、「中間とりまとめ」には、有期労働契約そのものをなくすという目標設定がなく、「一時的・臨時的な仕事に限らず、恒常的に存在する業務についても有期労働契約が利用されている実態が見られる」と指摘しておきながら、入り口規制に消極的であるなど、労働者のために雇用不安を解消するには不十分な内容にとどまっている。
     
  3.  雇用の継続と安定性は、労働者の生存権(憲法25条)保障の要であるとともに、幸福追求権(憲法13条)の要素をなすものである。
     無期労働契約を原則とする明文規定を創設し、有期契約労働者を必要やむを得ない場合にのみ認めるという明確な理念にもとづく有期労働契約規制を実現すべきであり、また、有期契約であることを理由とする差別的取扱いを禁止ずる規制を行うべきである。
     また、女性労働者の多くが有期契約労働者であるという実態も踏まえ、男女賃金格差の解消及び男女共同参画社会の理念を実現する視点に立った検討もなされるべきである。
     
  4.  民主法律協会は、無期雇用原則の明文化、入り口規制、均等待遇原則の確立を柱とする有期労働契約規制について、労働組合その他広範な団体・個人と連帯し取り組みを強める決意を表明する。

     
2010年8月28日
民主法律協会第55回定期総会
   
 
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