声明・アピール・決議
(権利討論集会 第1分科会アピール)

裁判と運動の両輪で労働者の権利闘争に勝利しよう!

  1. 第1分科会では、1日目には集団的労使関係における裁判闘争、2日目には個別的な労使関係における裁判闘争と、それぞれ分けて、問題提起をし、徹底的な討論を行いました。

  2.  第1部の集団的労使関係における裁判闘争では、近時まれにみる画期的・勝利的解決を勝ち取った第一交通事件、協和メインテナンス事件の2つの裁判闘争から、学ぶべきもの、その教訓について、参加者での共有を試みました。
     第一交通事件は、佐野南海交通が、無法、非道な労働組合潰しを否定しない第一交通産業に買収されたところから始まった事件です。次々と繰り出される嵐のような不当労働行為に対し、組合員が団結を崩さず徹底的に戦い抜き、数にして100にも登る裁判闘争、労働委員会闘争に全て勝利しました。とりわけ、会社の偽装解散による全員解雇によって組合潰しを狙うという最大の攻撃に対しては、当該労働者、弁護団、組合支援者一体になって、決して簡単ではない「法人格否認の法理」を正面にすえて理論武装し、事実を積み上げ、この壁を見事に突破しました。
     一方、協和メインテナンス事件は、公務現場における間接雇用の問題で、業務委託先の偽装請負労働者を全員解雇した事件です。偽装請負であることに加え、直接雇用を求める際には任用や入札、議会の問題がからむ、誰が見ても極めて困難な事案でした。これに対し、当該労働者や弁護団は、労働局への申告や、労働委員会を巧みに利用し、行政の是正指導や、労働委員会の救済命令を皮切りに、裁判上でも全面勝利和解を勝ち取りました。このような難しい論点を抱える大型の争議にしては、3年という比較的短期で全面解決に結びつけた、極めて画期的な闘争でした。
     このような2つの裁判闘争においては、まさに車の両輪である裁判と運動の双方を、相互に関連させ、最後までやり切った先に、勝利がありました。裁判内においては、徹底して積み上げた事実、議論を重ねて構築した理論、その双方を裁判所につきつけ、また裁判外における様々な行動で裁判所を包囲しました。
     裁判と運動。この車の両輪を互いに強めることによって勝利する、これは民法協の伝統ともいえます。困難な闘いをなぜ勝ち抜けたのか、改めて振り返って議論することにより、勝利した裁判闘争の教訓について、若い弁護士、労働組合、あるいは今現在問題に直面している労働者に伝え、そしてこれからの闘いに活かし、立ち向かっていく。やることをやりきった中で勝利があるという、基本的な姿勢と経験を改めてここで確認します。

  3.  変わって第2部では、主に個別労働事件について、現在の労働事件を巡る裁判の状況、裁判所の状況を把握し、その活用方法について分析を行いました。
     現在、ここ大阪においても、労働事件の増加傾向は顕著です。本訴や仮処分も昨年から増加傾向にあり、労働審判に至っては昨年の約2.5倍にも増えています。労働審判については、早い解決ができる、あるいは、本訴よりもアクセスが容易であるというメリットがあり、一方で、解決水準や審理方法の問題など、いくつかの問題点も明らかになってきました。
     我々としては、制度の問題点について改善の働きかけを行う一方で、そのメリットを生かし、まだまだ埋もれている労働問題を抱える労働者を掘り起こし救済していく、そういう取り組みが求められています。これまで民法協が担ってきた役割からしても、埋もれた労働者のために労働問題解決についての支援を行うセンター的役割を担う必要性を再確認し、早急に現状に即した新しい取り組みを検討することを今後の課題としてここで確認します。

                                             以  上

2010年2月14日
民主法律協会権利討論集会第1分科会
   
 
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