民主法律時報

2020年4月号

不当労働行為・労働委員会制度の改善のために

島根大学名誉教授 遠藤 昇三

権利討論集会の第1分科会(労働委員会をどう戦うか)で最後に発言の機会を得ましたが、それを以下に文章化します。併せて、報告・議論で出された不当労働行為・労働委員会制度の改善(私も一部その発言に含めましたが)について、提言させて頂きます。

1.発言

当該事例における様々な差異や事情を捨象して基本的なスタンスとして言えば、不当労働行為に対する戦いは、まずは労働者・労働組合の自力による解決が必要であり、それが不十分なり成功しなかった場合、労働委員会の救済制度(裁判を含め)に頼るということであることです。そして、労働委員会(裁判を含め)の戦いを、孤立したまたは担当者任せの扱いにするのではなく、労働組合運動全体の一環に正しく位置づけ取り組むべきです。また、戦前以来強調された「モ・ヒ・ベの団結」を徹底させることが、必要です。即ち、労働委員会の救済を求めた当事者(労働者・労働組合)、弁護団、当事者を取り巻く労働者・市民の団結、そしてその総力で以て、労働委員会・裁判所という初めからは労働者の味方ではないものを味方にする(救済を求めた側にとって有利な判定・判決を引き出す)という取組みが、必要です。

迅速性や実効性等にいろいろ疑問なり問題がある労働委員会制度ではありますが、もし労働委員会制度がなければどれだけのまともな労働組合が生き残れたか、と総括して良いところです。それだけに不当労働行為・労働委員会制度のより良いあり方を目指して、改善が求められるところです。

2.不当労働行為・労働委員会制度の改善に向けた提言

(迅速性の確保)

不当労働行為・労働委員会制度は、不当労働行為の迅速な救済を目的としています。しかし、それに反する状況にあるのですが、その最たる問題は、5審制となっていることです。即ち、使用者に異議ある限り、労働委員会段階では命令が確定せず、地裁・高裁・最高裁でようやく確定する(命令支持であれ)ため、紛争が長引くということです。これを改善するためには、労働委員会段階で命令を確定する制度に変える必要があります。これに対する不安は、申立て棄却の場合、裁判の道が閉ざされることにならないかということでしょうが、これに関しては、たとえば不当労働行為を理由とする損害賠償請求訴訟を起こすといったことが考えられますので、いずれにしても、当事者たる労働者・労働組合にデメリットはないと思います。

(実効性の確保)
緊急命令制度及び労委命令の確定判決による支持の場合の違反に対する刑罰と確定命令違反における行政罰があります。しかし、緊急命令制度においては、労働者・労働組合は当事者ではなく、労働委員会任せである上に、望ましい緊急命令が出る保証はありません(その上、必ずしも活用されていません)。後者とりわけ刑事罰は、不当労働行為と違反との間の間隔の開きもあって、現実には機能していません。
不当労働行為の厳格な禁止としての実効性の確保だとすると、不当労働行為処罰規定の導入が考えられます。しかしそれは、旧労働組合法時代に経験があり必ずしもうまくいかなかったことから、次のようなことが考えられます。上記の労委命令確定制度を前提として、その命令違反に対する処罰とする(現行の行政罰の処罰化)のです。

(労働委員会の再編成)
中労委が東京に一つしかなく、中労委にかかった場合の労働者・労働組合の負担は大きなものがあります。この負担軽減のためには、中労委の「支局」をたとえば高裁のある地域に設け、そこで審査・判定を行えるようにすることが、望まれます。
他方、ほとんど事件がない県労働委員会を、たとえば中国ブロックで一委員会とする改革を、求めて良いと思います。各県最少でも公・労・使15名を任命することになりますが、大きな無駄のように思います。そして、たとえば東京・大阪等申立ての多い地域の委員を増やせば、迅速性を確保出来るでしょう。

エミレーツ航空事件―― 組合員を現実に就労させるよう命じた中労委――

弁護士 森  信雄

1 事案の概要

エミレーツ航空(以下「会社」という)の西日本支店・予約発券課(以下「本件課」という)は日本のコールセンター業務を担っていた。

2013年1月、パワハラや残業代未払問題を契機に、本件課所属の3名の労働者(以下「組合員」という。)が労働組合(以下「組合」という)を結成した。

会社は、合理化策の一環と称して、2013年5月に中国・広州コールセンターを開設し、本件課への電話が同センターに転送されるようになった。組合は、業務量減少に伴うリストラを危惧し、会社に問いただしたが、会社は、「雇用は保障され、配転もない」旨回答した。

2013年6月以降、パワハラや残業代未払問題を主な議題として団交が行われたが、2014年3月時点でも未解決であり、組合は引き続き会社の責任を追及していた。

2014年5月、会社は、突然、本件課を含む三部署の廃止を発表し、廃止対象部署所属の13名(組合員3名を含む)に早期希望退職を含む複数の選択肢を提案した。3つある新設ポジションの応募期間は2日、希望退職の応募期間は2週間であった。

組合は、団交開催まで会社提案の凍結を求めたが、会社は無視した。さらに組合は団交による解決を求めたが、会社は、同年6月、大阪コールセンター廃止を強行し、業務がなくなったとして、組合員に自宅待機を命じ、同年9月に解雇した。

組合は、本件自宅待機命令及び本件解雇が組合員に対する不利益取り扱い及び組合に対する支配介入であることを理由に、不当労働行為救済申立を行った。

2 会社を断罪した府労委命令

2016年10月11日、府労委は、整理解雇の四要件に相当する事実のいずれも認め難いこと、会社と組合が対立関係にあり本件自宅待機及び本件解雇に至る経緯において組合軽視の姿勢が窺われることを考慮すると、本件自宅待機及びそれに連続する本件解雇は不利益取扱いにあたり、支配介入にも当たるとして、①解雇がなかったものとしての取扱い及び賃金相当額の支払い、②謝罪文の手交を命じた。

3 中労委での審理

会社は不労委命令を不服として再審査申立をしたが、別途、本訴で解雇無効判決が確定したため、組合員に賃金の支払をするようになった。

会社は、不当労働行為性を争うとともに、賃金の支払をしていることを理由に、「申立の利益を失ったから却下すべきである」旨の主張をした。

中労委は和解による解決を勧め、組合は、組合員全員の速やかな職場復帰を求めたが、会社が誠意ある対応をしなかったため、和解は打ち切られ、2020年2月13日に命令が交付された。

4 地労委命令の内容を前進させた中労委命令

中労委命令は、詳細な事実認定を行った上で、本件自宅待機命令及び本件解雇は、組合員に対する不利益取り扱いであり、組合に対する支配介入に当たる旨判示した。

申立の利益については、賃金相当額の支払いについては精算が終了しているとしつつ、「必要に応じてポジションを新設し、または、それができない場合も必要な研修等を行う等により、組合員3名の職場復帰を検討すべきものである」として、府労委命令の「解雇がなかったものとして取り扱う」との部分を「解雇をなかったものとして取り扱い、現実に就労させなければならない」と変更した。

原状回復の方法として「現実の就労」を命じた点は大きな意義を有するものである。

5 速やかな職場復帰を求めて

2020年3月12日、元職場とは異なるが、組合員のうち1名が職場復帰を果たした。
会社が行政訴訟を提起しなかったため、中労委命令が確定した。
今後は、残る2名の職場復帰と争議の全面解決が焦点となる。

(弁護団は、豊川義明、谷田豊一、佐々木章、細田直人各弁護士及び筆者である。)

東リ伊丹工場偽装請負事件 神戸地裁労働部の不当判決

弁護士 村田 浩治

1 それはないでしょう裁判長!

2020年3月13日、偽装請負で20年近く就労した後、労働組合を結成し偽装請負に気づいた労働者たちが労働者派遣法40条の6に基づいて就労先の東リに対して労働契約上の地位の確認を求めた裁判で、神戸地方裁判所第6民事部の3名の裁判官(裁判長 泉薫、横田昌紀、今城智徳)は、そもそも平成29年3月頃には、偽装請負(違法派遣)等の状態にはなかったとして請求を棄却する不当な判決を言い渡した。判決文を読むと「それはないでしょ!」という判断が展開されていた。

2 就労実態は派遣か請負か

(1) この事件は、巾木工程と化成品工程という製造課の二つの工程(東リには他にもいくつも工程があるうちの二つ)において長年偽装請負が続いていたが、労働組合が出来て派遣法にもとづく直接雇用を労働組合執行部が検討し始めた直後の2017年3月1日に巾木が、同年4月1日から化成品が、それぞれ労働者派遣契約に切り替わったという経過がある。たった一日で請負から派遣に切り替えても何の混乱もなく、製造がされていた経緯からみれば、これが偽装請負でなくてなんなのかということになる。提訴当初の裁判長も「これは派遣契約に切り替わったということが重要なポイントですね」と述べていた。それにもかかわらず、ふたをあけると、判決はそもそも「偽装請負状態」にはなかったというのである。これが驚かずにおられようかといいたいのは当然だろう。

(2) 判決は、派遣と請負について、本来仕事の完成を目的とする請負と労働者による労務の提供という契約の定義に言及しているが、派遣と請負の区別にあたっては、全面的に行政の基準にそって判断すると言明し、裁判所独自の判断基準は一切示さなかった。行政判断追従の姿勢が明らかで、脱法行為を許さず派遣労働者を保護するという観点はゼロである。

したがって、請負から派遣に切り替わっても何の問題もないという実態、すなわち労働者らが、東リの労働者と同じ工場組織に完全に組み込まれていたという実態には一切触れないまま、ひたすら東リの指示があったといえない、請負会社がしていた(ようだ)との判断を展開しただけで終始した。

(3) 例えば、東リの製造課の担当者が日常的にしていた指揮命令についての労働者の証言は、すべて「証拠がない」「信用できない」と退けて、原告の証言を無視した。さらに事実認定として無視しようがない指示の事実である「東リの製造課からの機械の掃除の個別労働者への指示」については、「機械を所有する東リが関心をもって指示をするのは不自然ではない」という具合に、指示があったことはどうするの?と思わず突っ込みたくなる判断を示し、行政区分で説明しようがない事実は理由もなく、無視するという具合である。

(4) 巾木は大量の原料を溶かして金型をとおして製造するもので、材料も機械もすべて東リの工場のものを使用していた。材料の費用の精算などは全くされていない。また工場の1階から2階に設置された大規模な機械の月額賃料が2万円とただ同然であった。そして社長が一人で他は東リで働いている従業員のみの個人会社が、独立して自ら機械を使用して独立して製造をしている請負であると断定したのである。

3 2012年派遣労働者保護法となった改正の趣旨を貫徹させるための逆転を

派遣労働者をこれ以上馬鹿にした判決はない。みなし規定の制定はリーマンショック後の大運動の成果である。それにもかかわらず、今度は偽装請負認定のハードルを異様に挙げたこのような判断が許されるはずはない。必ず大阪高裁で逆転勝訴を勝ちとりたい。

(弁護団は、村田のほか安原邦博、大西克彦の3名)

関西外国語大学 懲戒処分無効確認請求事件

弁護士 岸本 由起子
(原審代理人 戸谷茂樹 岸本由起子 片山直弥)

 令和2年1月29日、大阪地方裁判所第5民事部(裁判長裁判官中山誠一、裁判官大寄悦加、裁判官溝口達)は、原告らの請求をいずれも棄却するという判決を言い渡しました。

原告らは、控訴し、現在は、大阪高等裁判所13民事部C3係に係属しています。
第1回口頭弁論期日は令和2年6月11日午前10時に指定されています。

本件の争点は多岐にわたるのですが、字数の制限があるので、ストライキに関する事項に限って、報告しようと思います。
本件のストライキの特徴は、①開始当初は、ストライキと明言せず、団体行動権の行使としていたこと、②使用者側からストライキでないのであれば、懲戒処分するとの警告があり、その後、組合はストライキであると通告したこと、③平成23年4月から開始され、本件懲戒処分は平成29年1月付けであること(ストライキは長期間に及ぶこと)、④2コマを不担当とするストライキであること、⑤2つ目の委員会担当を不担当とするストライキもあること、⑥時間管理がされていない大学教員によるストライキであること、⑦長期間にわたるストライキの参加者は入れ替わりがあること、⑧賃金カットがされており、それは、「増担手当」だけではなく、賃金全体について割合を掛けて控除されたこと、⑨学園が懲戒処分前にストライキの有効性に疑義があるとして、警告していたことがあります。

原判決は、争議行為の正当性に関する判断枠組みとして、「争議権の保障は、労務不提供などの業務の正常な運営を阻害する行為であっても、かかる行為の刑事責任及び民事責任を特別に免責し、あるいはかかる行為を理由とする不利益取り扱いを特別に禁止することによって、団体交渉における労働者の立場を強化し、あるいは団体交渉における交渉の行き詰まりを打開するなど、団体交渉を機能させる趣旨のものと解される。」としました。いわゆる「機能説」に立つことを明らかにしました。

そして、「団体交渉は、労使が対等な立場で、合意により、労働条件の決定を始めとする労使間のルールを形成する機能を有していることに鑑みると、争議行為は、団体交渉を通じた労使間の合意形成を促進する目的あるいは態様で行われなければならないものと解される。」「争議行為の態様が、団体交渉において業務命令によって命じられた義務が不存在であることの確認(6コマまたは8コマを超えるコマ数の担当や複数の委員会担当を命じる業務命令に従う義務はないということの確認)を団体交渉の協議事項としつつ、争議行為として当該義務の履行そのものを拒否する場合、当該争議行為は、当該義務の不存在確認に関する団体交渉を促進する手段としての性質を有することは否定できないものの、他方で、当該義務の不存在確認という目的自体は、争議行為によって、団体交渉を経ずして達成されることになるから、当該争議行為は、労使間の合意形成を促進するという目的を離れ、労働組合による使用者の人事権行使となる側面がある。そのため、上記態様の争議行為の実施状況に照らし、当該争議行為が、業務命令の拒否自体を目的としているとみることができるなど、団体交渉を通じた労使間の合意形成を促進する目的が失われたものと評価できる場合には、当該時点から正当性を有しないものというべきである。」としました。

本件では、労使間の担当コマ数や委員会数をめぐる紛争に関する団体交渉は、これ以上の進展がない状態に至っていたから、本件の指名ストは、実現しない団体交渉事項として、団交目的を喪失したとして、正当性を否定しました。学園は誠実交渉を尽くしたとし、これ以上の進展は見込めないので、ストライキは違法としたのです。

学園が誠実交渉を尽くしたというのは、事実誤認です。裁判所は、学園が開示していなかった文書を開示したとして、明らかな事実誤認をしています。また、組合は、教員の労働時間実態調査を求め、また、理事長や学長が団体交渉に出席するよう求めていましたが、学園が応じることはありませんでした。

そして、そもそも、誠実交渉であったとしても、労働組合として、ストライキを打って、より高い合意をめざすことは、違法ではないはずであり、団体交渉が進展する状況にないからという理由をもって、当初は正当性が認められていたストライキが、その正当性を喪失するに至るというのは理解しがたいのです。

本件ストライキは労働条件向上を実現しようとしたものであることは争いのない事実であり、目的において正当であることは明らかです。また、その態様は、業務阻害性が低く、学園の運営にほとんど影響しないものであったからこそ、長期間続けても、学園から譲歩を引き出せなかったのです。

控訴審では、代理人として、豊川義明弁護士、牛尾淳志弁護士に加わっていただきました。
また、ストライキ権について、研究者に鑑定意見書の作成依頼を検討します。
引き続き、皆様のご支援をお願いいたします。

日本郵政20条裁判―― 154人が集団提訴!

弁護士 河村  学

1 日本郵政2次提訴

日本郵政で期間雇用社員として就労していた労働者154人が、2020年2月14日(一部は2月18日)、全国一斉に集団提訴した。提訴裁判所と原告数の内訳は、札幌(6人)、東京(57人)、大阪(57人)、広島(11人)、高知(7人)、福岡(8人)、神戸(8人)、長崎(4人)となっている。弁護団は総勢43人、損害賠償請求の総額は約2億5000万円で、「非正規」労働をめぐる訴訟としてはかつてない規模である。

請求の内容は、期間雇用社員の労働条件が、無期雇用社員の労働条件と比べ不合理な相違があり、労働契約法20条に違反するとして、相違する差額に相当する損害賠償等を求めるものである。請求対象にしている労働条件は、①住居手当、②年末年始勤務手当、③夏期・冬期休暇、④年始の祝日給、⑤有給の病気休暇、⑥扶養手当、⑦夏期・年末一時金、⑧寒冷地手当である。

2 第1次訴訟は最高裁に

この提訴を主導した郵政ユニオンは、既に、2014年に東京と大阪で労働契約法20条違反を理由とする裁判を提訴しており、東日本事件では、地裁判決(東京地判H ・9・14労判1164号5頁)、高裁判決(東京高判H30・12・13労判1198号4 5頁)が出され、西日本事件でも、地裁判決(大阪地判H30・2・21労判1180号26頁)、高裁判決(大阪高判H31・1・24労判1197号5頁)が出されている。また、別途、佐賀でも同種の裁判が起こされ、地裁判決(佐賀地判H29・6・30労経速2323号30頁)、高裁判決(福岡高判H30・5・24労経速2352号3頁)が出されている。これら3つの事件はすべて最高裁に係属しており、かつ、それぞれの判断内容も結論も異なることから、最高裁において一定の判断が出される可能性が高い。

特に、東日本事件東京高裁判決と西日本事件大阪高裁判決は、労契法20条に関する最高裁の初判断(ハマキョウレックス事件(最二小判平30・6・1労判1179号20頁)、長沢運輸事件(最二小判平30・6・1労判1179号34頁)以降の高裁判決であり、アルバイトに賞与を支給しないことを一部不合理とした大阪医科薬科大学事件大阪高裁判決(H31・2・15労判1199号5頁)、契約社員に退職金を支給しないことを一部不合理としたメトロコマース東京高裁判決(H31・2・20労判1198号5頁)とともに(いずれも最高裁に係属中)、今後の解釈の流れに影響を与える重要裁判例である。

3 本提訴の意義

今回、集団提訴は、この解釈の流れに大きなインパクトを与えるものである。有期雇用労働者など「非正規」とされてきた労働者のみならず、「正規」とされてきた労働者も含めて、不合理な待遇差はおかしいという声を大きくすることが、いまほど重要なときはない。政府でさえ同一労働同一賃金を口にせざるを得ず、裁判所も一定の解釈を確立しようとしている最中だからである。

また、労働者同士の間にも根強く存在する差別意識・競争意識を押さえるためにも意味がある。世間的に根強く存在する有期雇用労働者は多少差別されててもいいとか、有期雇用労働者は「そういうもの」という感覚は、労働者を分断し、使用者に対する対抗力を弱めるため最大限に利用されてきたのであり、この取り組みは、こうした感覚を払拭し、連帯した運動を構築する足がかりになる。

さらに、日本郵政は、第一次訴訟での判決後、無期雇用社員の労働条件を引き下げる措置をとるなどし、また、相違の是正を求める郵政ユニオンの要求をことごとく退けるなど不当な対応をとり続けている。今回の集団提訴は、日本郵政を追い詰め、そこで働く有期雇用労働者全体の労働条件の引き上げを現実に勝ち取るたたかいでもある。

新人・若手歓迎企画 KBS京都訪問ツアーのご報告

弁護士 西川 翔大

2020年2月29日(土)に、民法協の新人・若手歓迎企画として、派遣研究会と共催で、KBS京都訪問ツアーを開催しました。参加者は、新人・若手弁護士だけでなく中堅・ベテラン弁護士、労働組合の方々など多様なメンバー10名で実施されました。

初めに、KBS京都労働組合の長岡さんに解説を受けながら、テレビやラジオのスタジオを見学させていただきました。丁度生放送の収録が行われていたので、テレビ撮影の裏方の仕事を見学しながら、そこにいる撮影スタッフ(カメラマンや音声、フロアディレクターなど)のほとんどが正社員ではなく、非正規・派遣社員・アルバイト(構内スタッフ)であること、構内スタッフの多くが放送局などいくつかの現場を掛け持ちしながら生計を立てていることなど、放送局の従業員の過酷な労働環境を解説していただきました。だからこそ、労働組合が従業員のいのちと健康を守るために会社に対して強く申入れなければならないという必要性を実感しました。また、現在YouTubeやネット配信が盛んで、若者のテレビへの関心が低下している状況で、KBS京都のようなローカル局は市民に身近な放送を心がけて、KBS労組と市民との交流がますます重要になるということも解説していただきました。

午後からは、KBS労組の副執行委員長の古住さんから、KBS労組のこれまでの闘いや派遣社員の直用化・無期化の動き、組織拡大の手法などについて詳細にご報告いただきました。

KBS労組は、歴史的に、会社更生法の適用を申請し事実上倒産したKBS京都の再建に大きく関与した経験から、徹底的に闘えば要求を実現できるという信念と、熱心な学習と議論に裏打ちされた戦略に基づいて、素晴らしい実績を築き上げてきました。

また、未加入組合員に対してもコミュニケーションレターを届け、組合の活動や組合への参加について地道に声かけをし、毎年10名以上の加入という目標を達成し、現在も組織率70%を達成しているということをうかがい、組合の組織拡大という面でも非常に参考になりました。

これまでKBS労組の実績を聞くことはよくあったのですが、その実績がたゆまぬ学習や議論と粘り強い闘いに裏打ちされているものであることが分かり、私自身の今後の弁護士としての姿勢においても非常に勉強になりました。今回ご協力いただきましたKBS労組の皆様ありがとうございました。

過労死連絡会 新人ガイダンス報告

弁護士 吉留  慧

1 はじめに
2020年3月11日、本年度の過労死連絡会新人ガイダンスが開催されました。コロナウィルスの影響が心配されたため、参加者は念入りな手洗い・アルコール消毒をし、万全の対策のもと開催となりました。

2 ご遺族のお話
ガイダンスの第1部では、弟様を過労自死によって亡くされた遺族の方のお話を聞かせていただきました。詳しく記載することはできませんが、遺族本人から聞くお話は、基本書や裁判例のみからは到底読み取ることのできない、過労自死の酷さ、遺族の辛さ、悔しさ、家族の死から立ち直ることの困難さを痛感しました。特に、遺族の方の「修羅道に入ったような生活」という言葉は、特に印象的でした。

また、過労自死については、勤務先の会社に問題が有るわけではなく、社会全体の構造的な問題があるということも知ることができました。
さらに、あまり見ることのできない、実際の事件の中で代理人が提出した意見書、会社の再発防止策策定義務・口頭による謝罪を盛り込んだ画期的な和解案も実際に見せていただき、大変貴重な機会となりました。

最後に、遺族の方から、弁護士という職業は、どん底にいる依頼者の生きていく道を照らし、お亡くなりになった方の誇りすら取り戻すことのできる職業だと思います、と激励のお言葉をいただき、今後はより一層依頼者の方の言葉に耳を傾けるよう決意を新たにすることができました。

3 認定基準
ガイダンスの第2部では、岩城穣弁護士より精神障害の認定基準について、上出恭子弁護士により、脳・心臓疾患の認定基準について講義をしていただきました。

お二人の先生には、認定基準の変遷の歴史、ターニングポイントとなった事件についても併せてご教示いただきました。現在から考えれば当時の認定基準の不適切さは明白であるにも関わらず、認定基準の改訂には数十年の年月と、遺族・弁護士の不断の努力があったことを知りました。

また、認定基準については、認定基準の詳しい解説、過労死・過労自死事件を受任する際の留意点等、実務に即した形でご講演いただきました。短い時間のなかではありましたが、労災申請の際の提出書類の書き方、書類作成の注意等細かな点までお話いただきました。非常にわかりやすくご解説いただき、実務経験の乏しい私にも、実務のイメージを掴むことができる内容でした。

 今回のガイダンスでは内容が盛り沢山であったこともあり、証拠収集の方法や、裁判における立証活動の点までは話が及びませんでした。それらの点については、今後の勉強会において取り扱われる予定となっています。

第2回 労働相談懇談会「年次有給休暇について」

おおさか労働相談センター相談員 舛田 佳代子

 第2回労働相談懇談会を2020年3月27日(金)国労会館において開催し、6単産・7地域・弁護士・その他から35名の参加がありました。今回の学習テーマは、堺総合法律事務所の井上耕史弁護士による「年次有給休暇について」と、南大阪法律事務所の西川大史弁護士による「コロナ関連の労働相談について」でした。

新型コロナウイルスの感染拡大によって寄せられる様々な相談に対応するため、急きょ西川大史弁護士を講師に「コロナ関連の労働相談について」の学習を行いました。休業を命じられたときには休業手当を請求できること。休業の理由についても、感染したと疑われる正当な理由がなく感染拡大予防のためという場合は、使用者の自主的判断による休業命令になるので休業手当を請求できること。新型コロナの影響で経営が悪化したことを理由にした解雇や雇い止めについては、企業が倒産・解散した場合を除き整理解雇の4要件を満たさなければならないこと。

また、内定取り消しについても、採用内定によって労働契約が成立するため、内定を取り消すためには整理解雇の4要件を満たす必要があること。内定取り消しで注意すべき事は、会社が自主的な内定辞退を求めてくる場合で、辞退を認めるような書類には決して署名しないことなど、厚労省が発表する資料をもとに具体的な学習内容でした。

「年次有給休暇の基礎知識」についての学習では、年休制度の主旨と年休の権利、その原則から学習しました。

年休は、1日単位(0~24時)が原則で、労働者が日を指定する(時季指定権行使)ことで、就労義務がなくなることが基本。時季指定は労働者の意思表示で成立し、使用者の承諾はいりません。使用者は、労働者が年休を取ることを前提に体制を組まないといけないため、代替要員がいないからといって年休を拒むことはできないこと、使用される順番は繰り越された年休からと考えること、自然災害で交通機関が止まり臨時休業した日について、一律有給休暇届けを出すよう指示することについては、自然災害で会社が倒壊するなどの状況でない限り休業手当の支給の要件になるので、一律に有休届の提出を求めることは許されないことなどを学びました。

会場からは具体的な闘いの中で問題になった事例が質問されました。参加者から、交通機関の遅延で欠勤・有休の選択を指示する会社への対策、解雇の時の残った有休の扱いの対応ど、実際の課題解決や考え方がわかったと感想が寄せられました。

《書籍紹介》『日韓比較労働法3 韓国労働法の展開』(旬報社)を読んで

弁護士 中村 和雄
(京都/市民共同法律事務所)

 民法協の会員であり民法協がもっとも頼りとする労働法学者の一人である脇田滋さんが編者の一人である『日韓比較労働法3 韓国労働法の展開』が旬報社から出版されました。この本は、2010年に始まった日韓の労働法研究者らの共同研究「日韓労働法フォーラム」での報告内容をまとめたものの第3弾です。2014年第7回以降のフォーラムの研究成果報告がまとめられています。フォーラムは毎回テーマを設定して日韓の報告が行われているのですが、本書では読者に理解しやすいように各回のテーマを並び替えています。第1章「朴政権下の労働市場改革と労働法の課題」、第2章「文政権下の労働法改革」、第3章「雇用平等法の現状と課題」、第4章「労働者派遣法の分析」、第5章「労働時間規制の現状と課題」、第6章「個別労働紛争の解決」となっています。

本書は全部で16節から構成されており、うち2節が脇田さんの報告、うち4節が韓国研究者の報告を脇田さんが翻訳したものです。ご承知のとおり、脇田さんはわが国の労働法学者の中で最も韓国労働法と労働運動を理解している学者です。1985年にわが国で派遣法が成立しました。多くの労働法学者がその有用性を指摘する中で、派遣法の適用対象は年々拡大し、もはや例外とは言えない存在になってしまいました。脇田さんは、成立前から派遣という働き方の危険性を指摘し、一貫して派遣の導入・拡大に反対してきました。韓国労働界がこうした脇田さんの研究や活動をネットで知り韓国での講演を依頼したことが、日韓の労働法研究交流の契機となっています。

韓国労働法も、他の法分野と同様に以前は日本法を見本としていました。しかし、その後欧州の進んだ法制を積極的に取り入れて制度改革をはかるなど、労働者の立場から見てわが国より進んだ法制が随所に見られます。労働時間規制や非正規の正規化などは大変参考になります。わが国と韓国の労使関係を始めとする労働環境はかなり近似しています。これまでわが国の労働法や労働運動の研究・交流はヨーロッパに偏重していましたが、韓国の法制度や労働運動はわが国の制度や運動の在り方を考えるにあたって、極めて学ぶことが多いのです。多くの皆さんが、本書をお読み頂き、わが国の制度改革や運動の在り方を考える参考にして頂ければ幸いです。そして、民法協でもさらに韓国との交流を深めていきましょう。

旬報社
2019年11月30日 発行
A5・300頁
定価 5000円+税

《エッセイ》加藤周一からの手紙 民法協の一頁

弁護士 大江 洋一

 ソ連邦崩壊の直後といっていい時期に、民法協の35周年記念講演を、「知の巨人」と称される加藤周一さんに依頼した。1991年のことだ。「社会主義に未来はあるのか」というのがテーマである。

直接依頼に足を運んだのは実行委員長としての私と、当時事務局長だった出田さんだった。学生時代に懇意だった京都生協専務理事の井上吉郎君に仲立をしてもらった。意外に気軽に引き受けてくれた(ようにみえた)。それ以後、私から加藤さんに、手紙で、民法協の組織の紹介と、演題への意図を伝えた。

実は、まったくお恥ずかしいことに、私自身は名前を聞いたことがあるという程度で、『羊の歌』も読んだこともなく、教科書に載っていたことすら知らなかった。企画段階で、彼に心酔していた出田さんが強く希望したので、講演料は民法協にしては弾まねばと腹を括った。

依頼の趣旨には、ソ連邦の崩壊は「社会主義の理想」の崩壊・喪失ということになるのか? 我々はどうすれば再起、再生できるのだろうか、という素朴かつ深刻な問いかけに、率直に加藤さんの考えているところ聞かせてほしい、と書いた。実は、私としても日弁連の刑法改正委員会活動の中で、「体制としての社会主義」の現状への疑問から、その問題点を何とはなしに意識し始めていた時期であり、「安穏な社会主義者」たちに目を開いてもらいたいという些か不遜な思いもあった。

講演内容は、慎重を期した加藤さんの意向に沿って文章化しなかったので、いささか記憶はあいまいであるが、マルクスが目指したものは正しい方向を示している、しかし、問題を抱えてきたのは事実であり、事実から目をそらさず、問題点を率直に受け止めていかなければならない、そのためには、科学や文化・芸術の幅広いバックグラウンドが必要だ、というような趣旨だったように思う。「お好きなようにしゃべってください」と言っていたものの、加藤さんは、話しながら司会者席の私のほうをちらちら見ながら、「おい、ここまで言ってもいいんかい」と何度か目で問いかけてきた。私はその度に大きくうなずいて、「もっともっと遠慮なくやってください」とけしかけるように頷き返した。それに安心したのか、それ以後も一段と気分が乗ったのか、文化・芸術への寄付免税の話まで饒舌といえるような話ぶりだった。超満員の会場(旧弁護士会館6階)は、大きく盛り上がった。終了後のレセプションや一休みした喫茶店、2次会にも快く参加された。加藤さんも本当にご機嫌だった。

それ以来私も『夕陽妄語』などを意識的に読むようになったが、今回予期せぬ事態で時間ができ、これを機会に『日本文学史序説』を妻の本棚から引っ張り出して読み始めることとした。

上巻を開くと、写真とチラシと手紙が挟まれていた。私からの講演のお礼状への返事だ。
冒頭、「良いお手紙をいただき、大いに勇気づけられました。『大衆的運動の再生のために』も拝見、まことに説得的な議論だと思いました。」から始まり、「ご返事が遅れたのは、お手紙の内容が重く、おざなりのお礼を書きたくないと思ったからです。」と続き、「先日の「社会主義再考」は、小生にとっても一歩踏み込んでマルクス主義そのものに対する小生の考えをまとめて表現するのによい機会になりました。」「公的な発言で、しかしそれが反動的権力とその手先によって利用される恐れのない(または少ない)機会はめったにありません。小生の意見が少しでもお役に立ったとすればこれほどうれしいことはないのです。」と書かれているではないか。あの時期、彼は、真剣にこのテーマを掲げて一歩を踏み出す機会を模索していたのだ。彼が二つ返事で引き受けてくれたことはそういうことだったのだ。

マルクスを理解し、共感もしながら、その現実の問題点も鋭く見抜いてきた彼としては、これを契機として「評論家」から「良心的実践派」へと、一つの踏ん切りがついたのではないか。後の「九条の会」の立ち上げに連なったといってよかろう。この手紙を読み直して、当時は全く理解していなかったことが、いまごろようやく見えてきたような気がしてきた。しかも、最後に「もう一度良いお手紙に御礼を申します。」と締めくくられているではないか。加藤さんにとっても本当に良い機会だったのだ。

この手紙は単なる事務的なやり取りではない。エポックメーキングなエピソードの記録といえる貴重な手紙ではないか。その時撮った写真とともに、これは私にとっての「宝物」なのだ! この手紙を見せたら出田さんは悔しがるだろうな、と思ったその時、この手紙のたった一つの重大な「瑕」に気が付いた。
なんと、宛名が「大川洋一君」となっているではないか。封筒にはきちんと「大江」と書いていたのに・・
1991年、民法協35周年記念事業のなかでの一幕であった。

※『大衆的運動の再生のために』は民法協の本多・片岡先生還暦記念文集に寄せた拙稿である。民法協の事務所にはあるでしょうから、興味ある方は目を通していただければ幸いです。